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  • 動脈硬化症 atherosclerosis

    2015/02/17 作成

    解説

    疫学と課題

     心血管イベントは全世界で死因の第1位、我が国では冠動脈疾患などの心臓病と脳血管疾患は死因の2位と4位を占め、これらの疾患の病態基盤は動脈硬化である。我が国では人口の超高齢化により動脈硬化性疾患は増加が予想され、動脈硬化の予防と進展抑制は喫緊の課題である。


    病態・病因

     動脈硬化の病態と病因についてはコレステロール仮説、傷害反応仮説、炎症仮説に基づいて動物実験、細胞および遺伝子レベルで、あるいは我が国の大規模コホート研究“NIPPON DATA“などの疫学的研究により詳細に検討されている。高コレステロール血症は古くから冠動脈疾患の危険因子であり、他の危険因子である高血圧、糖尿病、喫煙、肥満等が重複すると動脈硬化性疾患の発症リスクは加速度的に高くなる。この概念がメタボリックシンドロームとして確立された。
     粥状動脈硬化巣の形成を簡単に説明すると、上記の危険因子により惹起される血管内皮細胞機能不全に低分子Gタンパク質Rac-1やRhoAが関与し内皮細胞間に隙間が生じ、コレステロール含量の高い低比重リポタンパク(low-density lipoprotein, LDL)が血中より血管壁に蓄積し、危険因子にて誘導される酸化ストレスによりLDLは酸化LDLへと変性していく。同時に内皮細胞に接着分子や炎症性ケモカインMCP-1の発現が誘導され、血中の単球は内皮細胞に接着し血管壁へ侵入しマクロファージに形質転換し、酸化LDLを貪食し泡沫化していく(図)。マクロファージはアンジオテンシンⅡや増殖因子(PDGF, FGF等)を産生し血管平滑筋細胞の遊走・増殖に、そして、細胞外マトリクスプロテアーゼ (MMPs) を産生しプラークの不安定化に関与する。マクロファージはさらに組織因子(TF) やplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1) を産生し不安定プラーク破綻時の血栓形成に関与し、そのことが急性冠症候群の発症に繋がる。 


    検査・診断

     簡便な非観血的検査として頸動脈エコーや冠動脈CTが頻用されているが、冠動脈疾患の治療方針決定には心臓カテーテル検査が必須となる。


    予防・治療

     禁煙を含む生活習慣の是正を根本にした動脈硬化の予防と進展抑制の詳細は、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインを参照されたい。

    図表

    参考文献

    1) 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版.