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  • 慢性閉塞性動脈硬化症(ASO) arteriosclerosis obliterans(ASO)

    2015/02/17 作成

    解説

    [病態]

     慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)は四肢末梢の主幹動脈において、徐々に動脈硬化性変化に由来して、末梢動脈の狭窄・閉塞により循環障害の症状(下肢疼痛、冷感、しびれ感、壊疽など)をきたす疾患をいう。動脈硬化には、比較的太い動脈に生じる粥状硬化(atherosclerosis)、小動脈での中膜硬化(Mönckeberg sclerosis)および細動脈での細動脈硬化(arteriolosclerosis)があるが、ASOではそのうちでも粥状硬化が重要である (参照:動脈硬化症)。また、糖尿病に由来する循環障害では石灰化を主とするMönckeberg型動脈硬化が特徴とされている。近年、わが国では人口の高齢化や食生活の変化に伴い、動脈硬化に起因するASOの増加が著しい。
     動脈硬化は全身の動脈に生じるため、脳・頸動脈・心臓(冠動脈)、腎動脈などの全身の重要臓器と関連する動脈硬化もきたし、全身合併症も生じてくる。冠動脈(虚血性心疾患が約30~50%)が最も多く、次いで脳血管障害(約30%)が生じ、生命予後でも5年間の経過観察で約30%が死亡している。これらの結果からもわかるように、ASOは「全身の動脈硬化性血管病変の一部分症」としてとらえる必要があり、本症の生命予後への配慮が指摘されているところである。


    [症状]

     ASOは慢性に経過するが、急性に憎悪することもある。実際の臨床では、Fontaine臨床症状分類(表)が「循環障害の重症度」とも関連して、治療選択にも応用できて有用である。詳細に検討する際にはRutherford分類(表)を用いることもできる。


    [診断]

     Fontaine分類に沿った問診が重要である。間欠性跛行では脊柱管狭窄症との鑑別が大事で、跛行の症状、運動負荷や体位による症状の変化についての聴取が重要となる。身体所見では末梢血管(大腿動脈・膝窩動脈・足背動脈・後脛骨動脈)の拍動の触診が不可欠である。足背動脈および後脛骨動脈の拍動を両方とも触れない場合、PADの存在が強く示唆される。聴診では血管雑音(bruit)の有無をチェックする。診察でPADが示唆された患者では足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index; ABI)を測定すべきである。ABIは足関節部収縮期圧を上腕動脈収縮期圧(左右のうち高い方)で除した値で簡便で優れた検査法である。跛行症状の訴えがない患者であっても、心血管系のリスクファクター(特に糖尿病、喫煙)を有する50歳以上の患者ではスクリーニングとしてABIを測定することが推奨されている。ABI<0.9でPADが疑われる。糖尿病患者や血液透析患者などで動脈壁の石灰化が見られる場合、見かけ上、ABIが上昇を示すことがあるので注意が必要である。病態診断には最近では動脈エコー、MRA、3D-CTなどが用いられる。最終的に血行再建術を考慮する場合に血管造影が施行される。


    [治療]

     治療法には薬物療法、運動療法、血行再建術として外科的バイパス術と血管内治療がある最近では外科的バイパス術と血管内治療を合わせたハイブリッド治療も行われる。その病態に適した治療の選択が重要である。

    図表

    • 表 虚血肢の重症度分類-Fontaine分類とRutherford分類との対比

    参考文献

    1) 古森公浩:末梢動脈閉塞症(Peripheral arterial disease:PAD)に対する最新の治療戦略,日本血栓止血学会誌 24(1):38-44,2013.
    2) 古森公浩:末梢性動脈疾患(閉塞性動脈硬化症,バージャー病)今日の治療指針:419-421,2014.