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マクロファージ macrophage
解説
概要
白血球の一種で、大食細胞、貪食細胞、組織球ともよばれる。正常組織に存在する組織(在住)マクロファージと炎症などの刺激によって動員される単球由来の滲出マクロファージに大別される。
機能
病原体に対する生体防御を担う重要な細胞で、自然免疫における中心的な役割を担っている。病原体などの異物を貪食し、ライソゾームで消化分解すると同時に抗原提示を行う。また種々のサイトカインやライソゾーム酵素を分泌し、殺菌とともにTリンパ球の活性化に働く。組織傷害や炎症巣などでは、組織因子やプラスミノゲン活性化阻害因子(PAI)を産生し、止血や血栓形成に寄与する。またPDGF(platelet-derived growth factor), FGF(fibroblast growth factor), VEGF(vascular endothelial growth factor)などの増殖因子を産生し、組織修復や血管新生などを促進させる1)。
種類
マクロファージの活性化には,古典的活性化経路に加えて選択的活性化経路が存在する。IFN-γ などのTh1タイプのサイトカインによって活性化(古典的活性化)されたものをM1マクロファージ、IL-4,IL-13などTh2タイプのサイトカインによって活性化(選択的活性化経路)されたものをM2マクロファージと呼称している2)。
1)M1マクロファージは、TNFα、IL-6、IL-12などの炎症性サイトカインや活性酸素種を産生し、Th1タイプの免疫応答を誘導するとともに抗菌及び抗ウイルス活性、抗腫瘍効果を発揮する。
2)M2マクロファージは、IL-10などの抗炎症性サイトカインを発現し、炎症の制御や炎症後の組織修復、寄生虫感染や脂質代謝などに関与する。腫瘍に対しては血管新生や免疫抑制に作用し、腫瘍増殖に促進的に作用する。腫瘍組織に浸潤しているマクロファージ(Tumor-associated macrophages,TAM)の多くはM2マクロファージで、多くの腫瘍でTAMの浸潤度が悪性度と相関することが報告されている3)。M2マクロファージは、IL-4, IL-13によって誘導されるM2a、免疫複合体などによって誘導されるM2b、IL-10などで誘導されるM2cに分類されている。
引用文献
1) 高橋潔,内藤眞:生命を支えるマクロファージ,竹屋元裕編著,東京,文光堂,2001.
2) Murray PJ, Wynn TA: Protective and pathogenic functions of macrophage subsets. Nat Rev Immunol 11: 723
3) 菰原義弘,竹屋元裕:がん間質マクロファージ,腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の役割,病理と臨床32:17-23,2014.