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  • 接着分子 cell adhesion molecules

    2015/02/17 作成

    解説

     細胞間の接着、あるいは、細胞と基質間の接着を担う分子である。狭義には前者を指し、インテグリンファミリー、Igスーパーファミリー、セレクチンファミリーなど、多種類のファミリーが存在する。接着分子の動的な機能はそれぞれ異なり、接着分子同士の結合により、白血球は血管内皮細胞と接着し、組織への白血球の浸潤を引き起こすことが知られている。

     インテグリンをはじめとする接着分子は、血栓形成をはじめとする、細胞・細胞、細胞・基質の相互作用を起こすだけでなく、炎症性細胞の浸潤、免疫反応、癌の転移など多くの生命現象に寄与する。炎症時にはセレクチンによる細胞間相互作用により、細静脈で白血球は接着・回転運動をはじめる。その後、インテグリン・Igファミリー、たとえば、インテグリンLFA-1(リンパ球)・Mac-1(単球)・ICAM-1(内皮)の間で強固な接着が起きる。接着した白血球は活性化され、間質に浸潤し、最終的に多くの病態に寄与していく。このように、接着分子は、炎症時の白血球浸潤、リンパ球ホーミングといった生体防御維持機構の中心として生理的に重要であるだけでなく、炎症性疾患をはじめとする病態形成においても重要である。血栓性疾患においても、活性化血小板は接着分子により血小板同士で凝集するだけでなく、やはり接着分子を介して白血球・血管内皮細胞とも接着し血栓が形成されている。

     動脈硬化病変を生体顕微鏡観察すると、白血球表面のセレクチンと内皮リガンドとの緩い結合を介した白血球の回転運動が認められる。動脈硬化の進展にはこれらの白血球遊走・接着・浸潤が必須であることが示されており、同部位では接着分子の発現上昇が認められる。発現亢進を来す因子は数多く存在するが、脂質異常症を背景として増加した酸化LDLもVCAM-1、ICAM-1発現を増加させることが知られている。