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  • アスピリン aspirin

    2015/02/17 作成

    解説

    【一般名(製品名)】

     アスピリン(バイアスピリン®)、アスピリン・ダイアルミネート(バファリン配合錠A81®
    【適応】
     1. 狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血性発作、脳梗塞)冠動脈バイパス術、あるいは経皮経管冠動脈形成術施行後における血栓・塞栓形成の抑制、など血栓症の再発予防(二次予防)。2. 川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)。1の適応では通常バイアスピリン®1錠(アスピリンとして100mg)、あるいはバファリン配合錠A81® 1錠(アスピリンとして81mg)を1日1回経口投与する。虚血性脳血管障害急性期にはアスピリン160-300mg/日投与が推奨されており、必要に応じてバイアスピリン®3錠あるいはバファリン配合錠A81® 4錠まで増量できる 2の適応では急性有熱期間はアスピリンとして1日体重1kgあたり30-50mgを3回に分けて経口投与する。解熱後の回復期から慢性期はアスピリンとして1日体重1kgあたり3-5mgを1回経口投与する。
    【副作用・禁忌】
     重篤な副作用としてはアナフィラキシー、出血、喘息、消化性潰瘍などが報告されている。過敏性の既往、アスピリン喘息に加えて、消化性潰瘍、出血傾向、出産予定日12週以内の妊婦、は原則禁忌とされている。また日本人脳梗塞患者に血栓症二次予防目的で投与した場合に、他の抗血小板薬より頭蓋内出血の頻度が高い可能性が報告されている。アスピリンの消化管障害を予防するためには、ピロリ菌陽性例では除菌を行う、消化管障害発症の危険性の高い患者ではプロトンポンプ阻害薬を投与する、などの対策が必要である。

    【作用機序】
     アスピリンのアセチル基が血小板シクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害して血小板のトロンボキサンA2産生を抑制することにより、血小板凝集を抑制して血栓形成を抑制する。

    【半減期・代謝経路】
     アスピリンは経口投与後速やかに血中濃度が上昇する。半減期は0.44時間と短いが抗血小板作用は不可逆的であり,その効果は血小板寿命である投与後7-10日間まで持続する。バイアスピリン®は腸溶錠であり、吸収、血中濃度上昇までの時間が長くなる。アスピリンは腸での吸収過程およびおもに肝臓で加水分解されてサリチル酸となり、投与後24時間までに大部分が尿中に排泄される(図1)。

    【その他のポイント・お役立ち情報】
     アスピリンが、血栓症を有する、あるいは既往のある患者の血栓再発予防(二次予防)に有効であることは多数の臨床研究で明らかである。糖尿病、高血圧などの血栓症発症の危険因子を有するが、血栓症の既往がない患者における血栓症発症予防(一次予防)目的でのアスピリン投与の有効性、アスピリン投与に伴う消化管性潰瘍の頻度と予防、アスピリンの有効性の個人差、など臨床研究が進んでもまだ結論がでていない課題も多い。また近年一部のがんの発症あるいは転移予防にアスピリンが有効であることを示唆する報告もある。

    図表

    • 図 アスピリンの代謝

    参考文献

    1) 矢尾板信裕,堀内久徳:【血栓症治療ガイドラインup-to-date】 その他(薬剤,検査,腎臓,糖尿病等) 糖尿病患者における心血管疾患のアスピリンの1次予防の位置づけ ADA/AHA/ACCF(解説/特集),血栓と循環 22巻1号:259-262,2014.
    2) 笹井貴子,平石秀幸:【消化器内視鏡治療の最前線】 内視鏡治療と抗血栓薬 抗血小板薬服用時の消化管出血に対する内視鏡的止血と止血後服薬への対応(解説/特集),Modern Physician 34巻5号:605-609,2014.