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  • 平滑筋細胞(SMC) smooth muscle cell(SMC)

    2015/02/17 作成

    解説

    概要・定義
     筋肉組織は大きく随意運動する骨格筋と不随意運動する平滑筋に分類され、平滑筋は主に消化管、膀胱、子宮、血管壁に分布する。平滑筋を構成する紡錘形細胞が平滑筋細胞であり、通常アクチン、デスミンなどがマーカーとして用いられる。正常血管壁では中膜にみられる紡錘形の単核細胞が平滑筋細胞(分化型平滑筋細胞)であり、ラミニン、IV型コラーゲンエラスチンからなる細胞外マトリックスに埋め込まれて存在する。分化型平滑筋細胞は、収縮能を有し、血管のトーヌスおよび血圧の調整を行っている。


    動脈硬化病変における平滑筋細胞

     動脈硬化症をきたす血管壁は内膜が肥厚し内腔の狭窄を起こす。ヒトの動脈硬化病変(内膜肥厚巣)は、実験動物とは異なり、多くは平滑筋細胞(脱分化型平滑筋細胞)および細胞外マトリックスが割合としては高く、さらにマクロファージ浸潤を伴う脂質成分と少数の炎症細胞で構成される。成熟した中膜の平滑筋細胞のほとんどは分化型平滑筋細胞であるが、血圧、加齢、代謝異常、喫煙など種々の外的ストレスにより、形質変換を起こし脱分化型平滑筋細胞へ変化すると考えられている。脱分化型平滑筋細胞は、線維芽細胞または上皮細胞様の形態を示し、収縮能は著しく低下し、逆に高い細胞増殖・遊走能を有する。内膜肥厚巣の平滑筋細胞は、中膜由来と考えられているが、骨髄由細胞や血管外膜由来であるという報告もある。


    血栓症その他の病態における平滑筋細胞

     分化型平滑筋細胞は、外因系凝固の開始因子である組織因子(TF)をほとんど発現していないが、脱分化型平滑筋細胞は高い組織因子発現を示し、血栓症にも関与していると考えられている。また脂質を貪食した泡沫細胞の一部が平滑筋細胞であるとの報告もあり、血栓が形成された後の器質化、血管新生、石灰化等の病態にも平滑筋細胞が関与すると考えられている。

    図表

    • 平滑筋細胞図

    参考文献

    1) 真鍋一郎,永井良三:血管平滑筋細胞の分化調節と動脈硬化,医学のあゆみ vol.223 No.13:1090-1097,2007.