大分類
  • 血管
  • 小分類
  • 疾患
  • 脳梗塞 cerebral infarction

    2021/12/08 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    1)病態・病因

     脳梗塞は脳動脈が閉塞することにより支配領域の血流が途絶して脳組織が壊死に陥る病態である1)。脳梗塞には無症候性脳梗塞と症候性脳梗塞がある1)。無症候性脳梗塞は脳卒中症状を伴わない脳梗塞であり、症候性脳梗塞は脳卒中症状を伴う脳梗塞である。脳卒中の病型の1つとして脳梗塞という場合は症候性脳梗塞を指す。海外では無症候性脳梗塞と区別するため症候性脳梗塞は虚血性脳卒中と呼ばれている。

    2)疫学
    厚生労働省「2017年患者調査」によれば、日本の脳卒中患者数は111.5万人であり高齢者ほど多い分布を示している。日本人の5人に1人以上は脳卒中を生涯のどこかで発症するといわれており、脳卒中は介護を必要とする原因疾患として認知症についで第2位を占めている。脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があるが、脳梗塞は脳卒中全体の4分の3を占める2)3)。脳梗塞は臨床病型としてアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞、その他に分類され、3大臨床病型が脳梗塞の3分の1ずつを占めている1)3)。

    3)検査と診断
    アテローム血栓性脳梗塞は頭蓋内外の主幹動脈の閉塞や狭窄に起因する皮質梗塞または皮質下の15mm以上の梗塞である。心原性脳塞栓症は心房細動、急性心筋梗塞、人工弁置換、左室血栓などの心疾患に伴う心内塞栓源に起因する脳梗塞である。ラクナ梗塞は穿通枝の閉塞により皮質下に生じる15mm未満の小梗塞である。その他の脳梗塞には動脈硬化以外の血管の異常、血液凝固異常、血管攣縮などによる脳梗塞が含まれる。これらの臨床病型は頭部MRI、頭部MRA,頸部血管超音波検査などにより診断する。脳梗塞の危険因子としては高血圧、糖尿病、脂質異常、心房細動、喫煙、大量飲酒、慢性腎臓病、メタボリック症候群が挙げられる4)5)。脳梗塞を発症すると片麻痺や言語障害などの神経脱落症状が生じる2)。

    4)治療の実際
    脳梗塞急性期には、発症後4.5時間以内であれば組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)による血栓溶解療法の適応がある6)。発症後8時間以内の主幹動脈閉塞には機械的血栓回収療法の適応がある7)。脳梗塞の再発予防には危険因子の厳格な管理と抗血栓療法が必要である4)5)。抗血栓療法としては、非心原性脳梗塞には抗血小板療法の適応があり、心原性脳塞栓症には抗凝固療法の適応がある。抗血小板薬としては主にアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールが用いられ、心原性脳塞栓症にはワーファリンが用いられるが、心原性脳塞栓症の原因の大多数を占める心房細動には最近は直接作用型経口抗凝固薬が用いられることが多い5)。

    引用文献

    1) Special report from the National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Classification of cerebrovascular diseases III. Stroke 21: 637-676, 1990.
    2) 内山真一郎:脳血管障害,黒川清,松澤祐次編,内科学II 第2版.文光堂,2003,1707-1715.
    3) 荒木信夫,大櫛陽一:病型別・年代別頻度―欧米・アジアとの比較,小林祥泰編,脳卒中データバンク2009.中山書店,2009,22-23.
    4) 内山真一郎:脳梗塞の予防と治療,内科学の展望:高齢化時代の内科学,日内会誌 95:8-13,2006.
    5) 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会編,脳卒中治療ガイドライン2021.協和企画,2021.
    6) 日本脳卒中学会脳卒中医療向上・社会保険委員会静注血栓溶解療法指針改定部会:静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第三版, 2019
    7)日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会策定:経皮経管的脳血栓回収機器適正使用指針(第4版), 2020