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  • 播種性血管内凝固症候群(DIC) disseminated intravascular coagulation(DIC)

    2021/12/13 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概念】
    播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation; DIC)あるいは播種性血管内凝固症候群は、著明な止血異常を呈し、重篤化すると致命的な出血や臓器障害を伴い、予後不良の可能性のある病態である。いろいろな概念が公表されているが、播種性の微小血栓形成に伴う、凝固活性化と消費に伴う線溶活性がみられるが、止血系因子の消費は代償されている場合もある[1-3]

    【病態・病因】
    白血病ならびに産科疾患はDICの発症頻度が高い基礎疾患であり、感染症や固型癌はDIC発症の絶対数が多い基礎疾患である。DICの発症機序としては、2つのタイプに分かれる。白血病、産科疾患などにみられる、組織因子(TF)やプラスミノゲンアクチベーター(PA)の著明増加による凝固・線溶亢進型と、敗血症などによるエンドトキシンや炎症性サイトカインなどによる凝固亢進・線溶抑制型である。また、線溶亢進が主体である大動脈瘤などのDICも存在する。DICで血栓が生じる部位は微小血管で、固型癌の骨髄転移例や移植後に発症するDICは、破砕赤血球を含有する溶血性貧血を伴い、血栓性微小血管症(TMA)との鑑別が困難である[1-3]

    【検査と診断】
    主なDICの診断基準には、厚生省DIC診断基準、ISTHovert-DIC診断基準[1]、急性期基準、日本血栓止血学会DIC診断基準[4]がある。基本的には血小板数、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン、フィブリノゲン・フィブリン分解産物(FDP)などの一般的止血検査のスコアリングにより診断する。しかし、近年ではアンチトロンビン(AT)、可溶性フィブリン(SF)、トロンビンアンチトロンビン複合体(TAT)などのバイオマーカーを採用して、DIC診断感度や特異度を向上させる試みがある[4]

    【治療の実際】
    DIC
    の治療には、基礎疾患の治療、補充療法(新鮮凍結血漿; FFPや濃厚血小板; PCクリオプレシピテートフィブリノゲン製剤)、抗凝固療法(ヘパリン/ヘパリン類、合成プロテアーゼ阻害剤、凝固阻害因子製剤{ATトロンボモジュリン; TM})ならびに抗線溶療法がある。血栓止血の専門家でなくとも、日本血栓止血学会の「科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサス」[2]ならびに国際血栓止血学会の「Guidance for diagnosis and treatment of DIC from harmonization of the recommendations from three guidelines.[3]の推奨度を参考に、DICの治療を行うことができる。

    引用文献

    1) Taylor Jr FB, Toh CH, Hoots K, Wada H, Levi M: Towards a definition, clinical and laboratory criteria, and a scoring system for disseminated intravascular coagulation. Thromb Haemost, 2001; 86: 1327-1330

    2) 日本血栓止血学会学術標準化委員会 DIC 部会: 科学的根拠に基づいた感染症に伴う DIC 治療のエキスパートコンセンサス,日本血栓止血学会ホームページ

    3) Wada H, Thachil J, Di Nisio M, Mathew P, Kurosawa S, Gando S, Kim HK, Nielsen JD, Dempfle CE, Levi M, Toh CH; The Scientific Standardization Committee on DIC of the International Society on Thrombosis Haemostasis.: Guidance for diagnosis and treatment of DIC from harmonization of the recommendations from three guidelines. J Thromb Haemost. 2013; 11: 761-767

    4) DIC 診断基準作成委員会:  日本血栓止血学会 DIC 診断基準 2017 年版、日本血栓止血学会ホームページ