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フィブリノゲン製剤 fibrinogen concentrate
解説
1) 生物学的製剤基準
Cohnの低温エタノール分画で得られた画分からクリオ化、吸着、沈殿、病原体不活化沈殿、透析、ろ過、凍結乾燥の工程を経てフィブリノゲンを濃縮精製したものである。
2)適応
通常は1回に3gを用いるが、年齢、症状により適宜増減する。
無フィブリノゲン血症患者に対して、70mg/kgの投与にて投与前から100mg/dL増加した報告がある。
3)副作用・禁忌
(1) アナフィラキシーショッック
本剤の投与にてアナフィラキシーショッックを呈した患者には使用してはならない。もし蕁麻疹、発疹、血圧低下、呼吸困難、発熱などのアナフィラキシー様症状が現れた場合には、直ちに使用を中止し、適切な措置をとること。
(2) 血栓塞栓症
明らかな血栓症や心筋梗塞などの患者には投与しないこと。
4)作用機序
フィブリノゲンは凝固反応の最終的な基質であるとともに、血小板凝集に必須のタンパクである。液相における凝固反応は血管内皮細胞の障害あるいは血小板の活性化などにより、組織因子が生成され、止血カスケード反応により最終的にトロンビンが生成されこれがフィブリノゲンを加水分解して、不溶性のフィブリンを形成するとともに、活性化した第XIII因子により安定化フィブリンが形成される。一方、傷害された血管内皮細胞に血小板がフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を介して結合すると、血小板膜タンパクであるGpIIb/IIIa receptorが活性化され、これにフィブリノゲンが結合して血小板凝集をさらに進行させる。かくして両者により強固な止血血栓が形成され出血が制御される。
5)半減期、代謝経路
フィブリノゲンは肝臓にて産生され半減期は3-6日である。2-5g/日産生され血漿濃度は200-400mg/dLに維持されている。
6)その他
・ヒト血漿から作られた製剤であり、種々の方法によるウイルス不活化等がなされてはいるが、すべての病原体の除去は困難であることから患者への説明を十分の行い、治療上の必要性を検討したのちに投与を行うこと。また、本製剤はヒト血漿由来の特定生物由来製品であることから、本剤を投与した場合には、医薬品名(商品名)、その製造番号(ロット番号)、投与日、投与を受けた患者の住所、氏名を記録し少なくとも20年間保存すること。
・高齢者に対しては患者の状態をよく観察して行うこと。
・妊婦、産婦、授乳婦への投与には有益性が危険性を上回ると判断される場合に行うこと。特にパルボウイルスB19感染では胎児死亡、胎児水腫、流産の危険性がある。
・溶解は添付の溶解液を37度を超えない温湯に加温したのちフィブリノゲン製剤に注入し、ゆっくりと泡立てずに振盪する。溶解後は輸血セットを用いて速やかに投与すること。
・日本、米国では先天性フィブリノゲン低下症のみが保険適応となっているが、欧州各国(ドイツ、スイス、オランダ、オーストリアなど)では後天性低下症にも使用が認められている。
参考文献
1) 真木正博他:基礎と臨床27:3803-3814,1993.
2) 山本晃士他:日本輸血細胞治療学会誌56:36-42,2010.
3) 髙松純樹監修:図解臨床輸血ガイド,山本晃士編,イラストで分かる,輸血の基本戦略.東京,文光堂,2011.