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    2015/02/17 作成

    解説

    [病態]

     動脈瘤は血管壁が局所的に拡張した状態をいう。多くは脳動脈か大動脈に発生する。大きくなれば破裂の危険性が増し、ひいては重大な出血や死につながる。未破裂脳動脈瘤は頭蓋内の比較的太い血管に発生し、その多くがくも膜下腔に存在する。したがって破裂するとくも膜下出血を来たす。


    [疫学]

     その発生率は平均年間10万人対約8人~20人と報告されている。日本は人口当たりのくも膜下出血の頻度が米国の2倍以上あるといわれている。腹部大動脈瘤(AAA)は大動脈瘤の3/4を占め,人口の0.5~3.2%が罹患する。


    [好発部位]
     頭蓋内の脳動脈瘤の好発部位は、前交通動脈30%、ついで内頚動脈後交通動脈分岐部25%、中大脳動脈分岐部15%との報告がある。腹部大動脈瘤の多くは腎動脈下の腹部大動脈に発生する(90%以上)。また胸部大動脈、膝窩動脈なども好発部位である。


    [原因]

    1)動脈硬化、2)外傷、3)非特異性動脈炎、4)特発性嚢状中膜壊死、5)梅毒、6)細菌感染、7)狭窄後拡張などが挙げられる。


    [分類]

     瘤壁の構造から真性瘤と仮性瘤、解離性瘤に分類される。真性瘤の場合瘤壁の3層構造が保たれているが、仮性瘤は動脈の外に血液が漏れ、隣接する組織によって押しとどめられている状態である。解離性瘤は動脈壁の解離によって脆弱化した壁が瘤化したものである。形態学的に嚢状瘤と紡錘瘤に分類される。嚢状瘤は血管壁の一方向だけが拡張したもので、紡錘瘤は血管全体が拡張したものである。嚢状瘤は破裂の危険性が高いと言われているが、明らかな証拠はない。

    [危険因子]

     女性、加齢、高血圧、喫煙、脂質異常症などが挙げられる。症状:多くは無症状で経過し、画像検査で偶然発見される。破裂の前兆あるいは徴候として突然の痛みなどが出現する。末梢動脈瘤では血栓性閉塞や塞栓症などによる阻血症状で発症することが多い。


    [治療]

     頭蓋内脳動脈瘤に対しては外科的クリッピングあるいはコイル塞栓術 (経カテーテル動脈塞栓術:TAE) が行われる。その他の動脈瘤では瘤切除及び人工血管置換術、あるいはステントグラフト内挿術、コイル塞栓術などが行われる。空置、バイパス術が行われることもある。

    参考文献

    1) 古森公浩:第14章 大動脈瘤 C,日本脈管学会編,腹部大動脈瘤脈管専門医のための臨床脈管学.メディカルトリビューン,2010,196-198.
    2) 古森公浩:腹部大動脈瘤,心臓血管外科テクニック II大血管疾患編.メディカ出版,2008,74-95.