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  • 遺伝子組換え活性型第VII因子製剤 recombinant factor FVIIa(rFVIIa)

    2015/02/17 作成

    解説

    【適応】

     活性型第VII因子製剤(Factor VIIa製剤)はインヒビター保有先天性血友病患者もしくは後天性血友病患者のバイパス止血療法や先天性第VII因子欠乏症患者における出血傾向の抑制、血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられるグランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制に用いられる製剤で、我が国では遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)が使用されている。


    【止血作用】

     生理的な止血機構は、血管傷害部位の内皮細胞上に発現した組織因子、血管内皮下組織中(線維芽細胞など)に存在する組織因子、あるいは活性化された単球上の組織因子に循環中のFVIIaが結合することから開始される。このTF/FVIIa複合体は細胞膜上で基質である凝固第X因子(FX)を活性化する。血液中のFVII濃度は約10nMでそのうち約1%の0.1nMが活性型となりFVIIaとして循環している。治療量のFVIIa (90μg/kg)を投与すると血漿中のFVIIaは約25nMに上昇する。この濃度(250倍)のFVIIaは、組織因子非依存性に活性化血小板膜上でFXを直接活性化する。したがって、FVIIIやFIXが機能しない条件下でも、これらの凝固因子をバイパスしてXaが生成され、引き続きプロトロンビンからトロンビンの生成が進む。すなわち、FVIIaは組織因子依存性および非依存性のFX活性化機序により凝固反応を進め、血管損傷部位特異的にトロンビンバーストを引き起こし止血をもたらす。


    【使用方法と効果】

     通常、急性出血に対しては、rFVIIaを初回90μg/kg投与し、その後は90-120μg/kgを、初期は臨床的に止血が観察されるまで2-3時間ごとに投与する。出血後可及的早期の投与がより有効である。成人の半減期は約3時間であるが、小児では半減期が短いため2時間毎の投与間隔が推奨されている。なお、軽度から中等度の出血の場合は、270μg/kg を単回使用することができる。トラネキサム酸と併用されることも多く、有効性が高まると考えられるが、腎尿路出血では尿路閉塞のおそれがあり併用は行わない。rFVIIaは既往免疫反応によるインヒビター力価上昇を認めない。このため先天性血友病Aの患者で、他のパイパス製剤に含まれている残存FVIIIに対して既往免疫反応によるインヒビター力価の上昇を認める患者では、免疫寛容療法前や重篤出血時に中和療法という選択肢を残しておくために、インヒビター力価を低値に維持する目的でrFVIIaが奨められる。また、血友病Bで第IX因子製剤や活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)に対してアレルギ一反応を示したり、ネフローゼを発症したりする患者にもrFVIIaが推奨される。


    【止血効果のモニタリング】

     rFVIIaの止血効果のモニタリング検査として、現時点で最適なものはない。主にTEG(現在では同様の原理で行われるROTEMが主流)やプロトロンビン時間(PT)もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の短縮効果によるモニタリングが行われる。


    【安全性】

     まれではあるが、 rFVIIa投与の有害事象として播種性血管内凝固症候群(DIC)や心筋梗塞、脳血管障害、深部静脈血栓、肺血栓塞栓症といった血栓症が報告されているが、多くは過量投与や肥満、脂質異常症などの危険因子の存在が指摘されている。