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  • 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) activated partial thromboplastin time(APTT)

    2015/04/23 作成

    解説

    【概要】
     活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)は、血液凝固機構のスクリーニングテストとして日常の臨床検査に用いられる。内因系凝固因子と共通系凝固因子の働きを反映しそれらの異常を検出するほか、ループスアンチコアグラント(LA)の検出、未分画ヘパリンのモニタリング検査などにも利用される。

    【基準値】
     標準化されていないため試薬・機器による違いがある。正常対照が30~40秒程度のことが多く、概ね±5秒以内を正常範囲、それ以上は状況によって精査の対象とし、10秒以上の延長は明らかな異常値とする。

    【測定法・測定原理】
     原理は3.2%クエン酸ナトリウム加被検血漿にシリカやエラジン酸などの接触因子活性化剤とリン脂質を含むAPTT試薬を加え、血漿中の接触因子を活性化した後、Caイオンを加えて凝固するまでの時間を測定するものである。目視検査が可能だが、フィブリン形成を測定する自動分析装置が一般的である。
     Langdell(1953)によってPTT(partial thromboplastin time)は血友病のスクリーニングとして考案されたが、後に安定した成績を得るために接触因子を一定レベルに活性化するAPTTが一般的となった。 なお、部分トロンボプラスチンとは、組織トロンボプラスチンのクロロホルムまたはエタノール抽出物で血小板第3因子様作用をもつリン脂質分画のことで、組織トロンボプラスチンの一部分という意味である。
     本法は標準化が行われていないため、試薬の性質により検査結果の意味が異なる場合がある。CLSIのガイドラインでは、凝固因子の欠乏が少なくとも30%未満の検体で、基準範囲より延長することを求めているが、より軽度の欠乏に対する感度の標記や検出目標は示されていない。ヘパリンやLAへの感受性は求められているが、具体的な規定はない。検査の目的にも多様性があるが、凝固因子欠乏状態のスクリーニング検査としての能力が損なわれている試薬もあり注意が必要である。血漿検体の作成についても注意が必要であり、CLSIでは検体作成のためのガイドラインに抗凝固剤や遠心分離の条件を記載している。

    【異常値を示す病態とそのメカニズム】
     APTTは内因系凝固因子(FIX、FVIII、FXI、FXII、高分子キニノゲン、血漿プレカリクレイン)と共通系凝固因子(フィブリノゲン、プロトロンビン、FV、FX)の低下や様々な凝固阻害物資の存在を反映する。APTTの延長は、先天性の欠乏症・異常症である血友病などや後天性の病態である肝硬変症など肝臓のタンパク質合成能低下、ビタミンKの欠乏、後天性血友病など凝固活性中和自己抗体の産生、マクログロブリン血症など異常タンパク質産生、大量出血やDIC(播種性血管内凝固症候群)、ループスアンチコアグラントの産生、経口抗凝固薬(ワルファリン)投与や未分画ヘパリン投与などが原因となる。

     APTT延長の全てが出血傾向を意味するわけではないことに注意が必要である。

    図表

    • 東京医科大学病院である期間に測定したAPTTの分布 N=9901 (引用文献1より引用)

    引用文献

    1) 福武勝幸:標準化,凝固検査の標準化,臨床検査Yearbook 2009 血液検査編,臨床病理レビュー142号:162-166,2009.

    参考文献

    1) 赤尾昌文:APTT,藤巻道男,福武勝幸編,血液凝固検査ハンドブック.東京,宇宙堂八木書店,1992,163-168.
    2) 福武勝幸,馬場百合子,上道文昭:これだけは知っておきたい検査のポイント,血液検査/凝固・線溶系検査,APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間),Medicina 42巻12号:100-102,2005.
    3) Dorothy M Adock, Daniel M. Hoefner, Kandice Kottke-Marchant et al: Collection, Transport, and Processing of Blood Specimen for Plasma-Based Coagulation Assays and Molecular Hemostasis Assays. Approved Guideline-Fifth Edition. CLSI H21-A5 Vol28, 2008.