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  • 後天性血友病 acquired hemophilia

    2015/02/17 作成

    解説

    1) 病態・病因
     凝固第VIII因子に対する自己抗体(インヒビター)が出現し、凝固第VIII因子が低下~消失するため重篤な出血症状を呈する自己免疫疾患である。生体免疫調節機序の制御不全等の要因が推測されるも詳細は不明である。


    2) 疫学

     発生頻度は100万人に1.5人(推測)、近年増加している。高齢者および分娩後女性に多い。基礎疾患を背景に発症し、中でも膠原病と悪性腫瘍が多い。


    3) 症状、検査と診断

     出血症状を呈し、皮下や筋肉内に多く、関節内は少ない。出血は広範囲にわたり、時に重篤な貧血を呈する。消化管や口腔内の粘膜出血や血尿も多い。症状が軽度の時もあり、3割は治療を要さない。検査では第VIII因子活性低下、交差混合試験でインヒビター型を呈し、最終診断は凝固第VIII因子インヒビター検出である。半数以上の症例は第VIII因子活性値が検出され、出血症状の重症度と活性値は相関しない。


    4) 治療の実際

     日本血栓止血学会から後天性血友病A診療ガイドラインが出されている。本症の治療はインヒビター消失を図る免疫学的治療が主体であり、止血治療の対象は重度の出血症状である。止血療法にはバイパス止血治療製剤として活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)が用いられる。診断がつき次第、出血症状に対する止血療法と平行して免疫抑制療法を開始する。第1選択は、プレドニゾロン(PSL 1 mg/kg/日)の単独療法を基本とする。症例によりPSLとシクロホスファミド(50-100 mg/日)の併用療法も考慮する。リツキシマブは、早期の完全寛解や出血コントロールの達成、感染症合併リスクの減少をもたらすと期待されているが、現在では保険適応は認められていない。



    5) その他のポイント・お役立ち情報

     免疫抑制療法で70-80%は完全寛解に至るが、再燃率は約20%である。死亡率も10-40%で本症は死亡率が高いことに留意する。

    参考文献

    1) 後天性血友病A診療ガイドライン作成委員会:後天性血友病ガイドライン,血栓止血誌22:295-322,2011.