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トロンボモジュリン測定法
解説
【基準値】
測定試薬によって異なる(標準化が十分には行われていないため、測定試薬の説明書などを参照すること)
【測定法】
ELISA法、化学発光酵素免疫測定法、EIAサンドイッチ法など
自動測定法の普及により、短時間での測定が可能である。
【異常値を示す病態】
トロンボモジュリンは血管内皮細胞上に存在する一回膜貫通型のタンパク質であり、トロンビンの結合タンパク(レセプター)である。トロンビンのフィブリン形成能やProtease-activated receptor 1(PAR-1)活性化能を低下させる一方で、プロテインCの活性化を促進するため補酵素とも考えられる。血管内皮細胞上のトロンボモジュリンを測定することは不可能であるが、細胞内ドメインおよび膜貫通ドメインが欠落した細胞外ドメインが血液中には存在している。この可溶性トロンボモジュリンは好中球エラスターゼ等のプロテアーゼが血管内皮細胞に作用し、トロンボモジュリンの一部が切断された場合や、サイトカインなどの刺激を受けた血管内皮細胞から脱落(shedding) した場合などに上昇すると考えられている。このため 血管内皮細胞傷害のマーカーと考えられており、血管内皮細胞の抗凝固機構の低下を反映すると考えられている。
臨床的には、敗血症症例などでは上昇する。しかしながら炎症病態が強い場合は、サイトカインなどの作用で血管内皮細胞上のトロンボモジュリンの発現そのものが低下するために、血管内皮傷害がより高度な場合は可溶性トロンボモジュリンの上昇そのものが低下する可能性があり、敗血症症例で、予後良好群と予後不良群の可溶性トロンボモジュリン値を比較すると、予後不良群は予後良好群に比べ、低い値を示す。また、近年ではトロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)、組織型プラスミノーゲンアクチベーター・プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 複合体(tPAI・C)のマーカーと組み合わせて、播種性血管内凝固症(DIC)を高感度・高特異度で鑑別する方法も報告されている。
可溶性トロンボモジュリンは腎臓から排泄されるため、腎機能が低下した症例では血管内皮細胞傷害などの無い場合も上昇し、異常値を示す。DICの治療薬剤である遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤使用後は上昇する。
参考文献
1) Liaw PC, Esmon CT, Kahnamoui K, Schmidt S, Kahnamoui S, Ferrell G, Beaudin S, Julian JA, Weitz JI, Crowther M, Loeb M, Cook D: Patients with severe sepsis vary markedly in their ability to generate activated protein C. Blood 104: 3958-3964, 2004.
2) Mei H, Jiang Y, Luo L, Huang R, Su L, Hou M, Wang X, Deng J, Hu Y. Evaluation the combined diagnostic value of TAT, PIC, tPAIC, and sTM in disseminated intravascular coagulation: A multi-center prospective observational study. Thromb Res 173: 20-26, 2019.