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血管内皮細胞 vascular endothelial cell
解説
1)構造と機能
血管内腔を裏打ちする一層の扁平状の細胞であり、動脈と静脈、毛細血管、さらに臓器によって形態・機能・発現する分子マーカーが異なる。内皮細胞は中胚葉に由来する血球血管芽細胞と、血管芽細胞より分化する。血管の緊張度や血管透過性の調節、血管新生、抗炎症、凝血促進、血管内皮細胞による抗血栓作用など、多彩な機能を有する。凝固・線溶系に関しては、凝血促進分子として、プラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)などを産生する。抗血栓分子として、組織因子経路インヒビター(TFPI)、トロンボモジュリン(TM)、血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)、組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)などを産生する。また、プロスタグランジンI2(PGI2)などを産生し、血小板の粘着・凝集を抑制している。これらに加え、血管収縮物質(エンドセリン)や血管拡張物質(一酸化窒素: NO)なども産生しており、血管収縮拡張にも関与する。また、血管内皮細胞管腔側に発現する接着分子は、単球や多核白血球の血管壁内侵入時に重要な役割を果たす。
2)病態との関わり
血管内皮細胞の機能障害は、動脈硬化症の発生や進展に重要である。酸化LDLや炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-αなど)などによる活性化や、内皮細胞障害によって、細胞表面に組織因子、トロンビン受容体、細胞接着因子(ICAM-1、VCAM-1、Pセレクチンなど)などが発現する。また、血流による物理的刺激が内皮細胞の機能に影響を与える。内皮細胞が剥離すると、剥離部に血小板が粘着・凝集するとともにフィブリンが形成され、動脈血栓形成が進行する
血管内皮細胞の機能障害は、動脈硬化症の発生や進展に重要である。酸化LDLや炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-αなど)などによる活性化や、内皮細胞障害によって、細胞表面に組織因子、トロンビン受容体、細胞接着因子(ICAM-1、VCAM-1、Pセレクチンなど)などが発現する。また、血流による物理的刺激が内皮細胞の機能に影響を与える。内皮細胞が剥離すると、剥離部に血小板が粘着・凝集するとともにフィブリンが形成され、動脈血栓形成が進行する
3)その他のポイント・お役立ち情報
静脈血栓形成においても、内皮細胞傷害が誘引となっている可能性が推測され、家兎頸静脈結紮モデルでは、うっ滞数時間後に内皮細胞の剥離と血栓形成が観察される1)。また、単球・好中球の内皮細胞への接着によって、静脈血栓が発生するとの報告もある2)。
図表
引用文献
1) Takahashi M, et al: Inhibition of factor XI reduces thrombus formation in rabbit jugular vein under endothelial denudation and/or blood stasis. Thromb Res 125: 464-470, 2010.
2) von Bruhl ML, et al: Monocytes, neutrophils, and platelets cooperate to initiate and propagate venous thrombosis in mice in vivo. JExp Med 209: 819-835, 2012.
参考文献
1) 第1章 血管,一瀬白帝編集,図説 血栓・止血・血管学 初版.東京,中外医学社,2005,15-118.
2) WC Aird: Endothelial cell function. In Hemostasis and Thrombosis, Marder VJ, WC Aird, JS Bennett, S Schulman, GC White II eds, Basic principles and clinical practice. 6th edition. Lippincott Williams and Wilkins, 560-568.