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  • 凝固因子活性測定法 coagulation factor activity assay

    2021/11/09 更新
    2015/04/23 作成

    解説

    【概要】
    血液凝固因子は複数の酵素と補酵素からなり、一連の反応を介して安定化フィブリン形成に至る役割を担っている。多くは古くに命名されており、一般名とともに番号(表)で呼ばれている。測定原理は血液凝固反応によるフィブリン形成を指標とする凝固法と一部の因子に限られるが合成基質を利用した合成基質法がある。
    凝固法ではフィブリノゲンを除き、活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time;APTT)あるいはプロトロンビン時間(prothrombin time;PT)の測定原理を応用しており、フィブリノゲンはトロンビン時間法を原理としている。凝固第VIII因子と凝固第IX因子については活性型第X因子の活性を直接反映する合成基質を応用した方法、凝固第XIII因子については凝固第XIII因子の合成基質を利用した測定法がある。フィブリノゲン以外は健常者プール血漿の稀釈列から得られたAPTT測定値による検量線から被検血漿の凝固因子活性を求める。健常者プール血漿を100%とし、健常者の平均値を基に活性を示しており、表示単位はパーセント(%)が用いられる。フィブリノゲンは血漿100ml当りのタンパク質量に換算した値をmg/dlを単位として示している。


    【基準値】

    健常者の各凝固因子活性値の分布について、十分な根拠となる情報の蓄積はなく、一般的には100±30~50%程度と考えられている。フィブリノゲンは300±100mg/dl程度とされている。


    【測定原理・測定法】

    凝固法は古くから用いられてきた方法であり、フィブリン形成による血漿の物理学的性状の変化を捉えるバイオアッセイである。血漿の粘度の変化を捉える力学的方法と光の散乱や透過度を捉える光学的方法があり、更に一定の閾値を凝固点として設ける方法と性状の変化率を捉えてアルゴリズムから凝固点を決める方法がある。
    また、凝固因子の活性化の方法により、凝固一段法と凝固二段法に分けられる。前者は一般的に自動測定装置で使われている方法であり、一連の凝固因子の活性化過程を測定する簡便な方法であり、主に凝固反応の初速度を評価するものと考えられる。一方、後者は古くに行われた複雑な用手法であり、1段階目に被検血漿の活性化を行いトロンビンなどを産生させたあと、2段目として凝固時間を測定するもので被検血漿の最大凝固能が評価出来るエンドポイント法と考えられる。
    フィブリノゲンはトロンビン時間法を利用して定量する方法が一般的である。
    合成基質法は凝固第VIII因子と凝固第IX因子については活性型第X因子に特異的な発色性合成基質を用いで、活性化条件と凝固第X因子濃度を一定にして被検血漿が一定時間に産生する活性型第X因子活性を測定する方法(凝固二段法に類似)がある。
    凝固第XIII因子についてはトロンビンで活性化された被検血漿中の凝固第XIII因子がグリシンエステルを凝固第XIII因子の合成基質に結合させ,その結果NH3を遊離する性質を利用して測定する方法がある。
    フィブリノゲン以外は健常者プール血漿の稀釈列から得られたAPTT測定値による検量線から被検血漿の凝固因子活性を求める。健常者プール血漿を100%とし、健常者の平均値を基に活性を示しており、表示単位はパーセント(%)が用いられる。
    フィブリノゲンは血漿100ml当りのタンパク量に換算した値をmg/dlを単位として示している。
    凝固第VIII因子、凝固第IX因子とフィブリノゲンについては純化標準品が制定されており、値付けされた2次標準血漿から定量値を求めることができる。


    【異常値を示す病態とそのメカニズム】

    先天性欠乏症は凝固第VIII因子と凝固第IX因子ではX連鎖劣性遺伝であるが、そのほかは常染色体性遺伝を示す。遺伝子の変異の状況によりタンパク質産生のないものから軽度の機能異常を示すものまでが知られており、その結果は出血傾向だけでなく、凝固第V因子ライデン変異のように血栓傾向を来すものもある。後天性の異常は出血による低下、播種性血管内凝固症候群(DIC)などでの消費性低下、後天性血友病など自己抗体による低下、経口抗凝固薬のワルファリン服用などがある。
    また、ループスアンチコアグラント例ではリン脂質の作用を阻害するため、ヘパリンアンチトロンビン製剤経口活性化凝固第X因子阻害薬(Xa阻害薬)の投与では凝固作用の阻害により見かけ上の低値を示すことがある。
    スクリーニング検査のAPTTとPTの成績により、異常が推定される凝固因子活性を測定する。
    1)APTTが延長しPTが正常の場合はFVIII、FIX、FXI、FXII、高分子キニノゲン、血漿プレカリクレインの異常、
    2)APTTとPTが延長の場合はフィブリノゲン、プロトロンビン、FV、FXの異常、
    3)APTTが正常でPTが延長の場合はFVIIの異常、
    4)出血傾向があるが両者に異常がない場合は凝固第XIII因子や線溶系の異常が考えられる。


    【注意事項】

    軽症血友病AではAPTT試薬による第VIII因子活性に対する感受性に多様性があることが知られており、用いる試薬により活性値が変わる。
    また、血友病Aの治療では、Bドメインを除いた製剤や長時間作用型製剤の一部で、APTT試薬の活性化物質により活性値に差が認められたり、凝固一段法と合成基質法で活性値に差がでることがある。合成基質法の方が臨床効果を反映していることから、欧州では濃縮凝固VIII因子製剤の活性測定に合成基質法の使用が求められている。

    図表

    • 表 血液凝固因子の因子番号と一般名

    参考文献

    1) 篠澤圭子:検査所見,白幡聡編集,みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂版).東京,医薬ジャーナル社,2012,116-127.