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VEGF受容体1(VEFGR-1)(FLT1)・VEGF受容体2(VEGFR-2)(FLK1/FDR) vascular endothelial growth factor receptor 1・2
解説
【概要】
血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体で受容体型チロシンキナーゼの一種。これまでにVEGFR-1(Flt-1)、VEGFR2(KDR/Flk-1)、VEGFR-3(Flt-4)が報告されている。VEGFの7タイプ(VEGF-A, -B, -C, -D, -E, Placenta growth factor(PlGF)-1, -2)のうち、VEGFR-1にVEGF-A, -B, PlGF-1, -2が、VEGFR-2にVEGF-A, -C, -D, -Eが、VEGFR-3にVEGF-C, -Dがそれぞれ結合する。sVEGFR-1はVEGFと結合する細胞外ドメインのみからなる。
【構造】
細胞外領域に7つの免疫グロブリン様ドメインを有する受容体型チロシンキナーゼで、第2、3免疫グロブリン様のドメインはVEGFとの結合に第4-7免疫グロブリン様ドメインは受容体の2量体形成に重要である。
【発現細胞】
VEGFR-1は一部の内皮細胞や単球、マクロファージ、VEGFR-2はほぼ全ての内皮細胞、sVEGFR-1は胎盤の栄養膜細胞(トロホブラスト)に発現する。
【機能】
VEGF-Aとその受容体VEGFR-1, 2は脈管形成、血管新生や病的血管新生に中心的役割を果たす。なお、VEGF-C, VEGF-Dとその受容体VEGFR-3はおもにリンパ管新生を制御する。sVEGFR-1は胎盤における胎児側や母体側血管の過剰新生や透過性を抑制する。
【ノック・アウトマウスの表現形】
VEGFR-1: ホモ接合体はE8.5-9.0で血管の形成異常や内皮細胞の過増殖により胎生致死。
VEGFR-2: ホモ接合体はE8.5-9.0で脈管形成の欠如のため胎生致死。胎生期には脈管形成に対して、拮抗した作用をもつとされている。
【病態との関わり】
妊娠高血圧症候群でsVEGFR-1の高値により内因性のVEGFを抑制し母体の高血圧やタンパク尿を引き起こすとされている。
【VEGF受容体阻害薬】
阻害薬としてVEGFR-2阻害薬や受容体チロシンキナーゼ阻害薬が開発され、各種進行癌に適応があり、無増悪生存期間の延長効果が期待される。一方、高血圧、蛋白尿、疲労感、下痢などの副作用が報告されている。なお、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、fms様チロシンキナーゼ 3(Flt3)、c-kitなど他の受容体型チロシンキナーゼの阻害作用を有する。
参考文献
1) Shibuya M: Vascular endothelial growth factor and its receptor system: physiological functions in angiogenesis and pathological roles in various diseases. J Biochem 153: 13–19, 2013.