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  • リンパ管新生 lymphangiogenesis

    2015/02/17 作成

    解説

    ■概要
     広義的には胎生期に静脈よりリンパ管内皮が分化・発芽しリンパ管構築に至る生理的なリンパ管発生(分化)と、成体で疾患(炎症や腫瘍)に続発し誘導されるリンパ管新生の2つがある。リンパ管新生は、出芽・伸展・過形成が主で、血管でいうvasculogenesisのような機序は一般的にない(図1)。

    ■リンパ管新生に重要な因子
    1)vascular endothelial growth factor (VEGF)-C-VEGF-R3:VEGF-Cは主に炎症刺激等で間葉系細胞に誘導され、リンパ管内皮細胞のVEGF-R3活性化により、その増殖・遊走を促進する。fibroblast growth factor-2、hepatocyte growth factor、platelet derived growth factor-BBなどのリンパ管新生もVEGF-Cによる間接的作用とされる。
    2)podplanin:血小板活性化受容体C-type lectin-like receptor2(CLEC-2)を介した血小板凝集の誘導による血流遮断が、静脈からのリンパ管の分離に必須な役割を果たす。
    3)転写因子:Prox1はリンパ管内皮分化のマスター遺伝子で、VEGF-R3、FoxC2、Ang2などを発現制御する。FoxC2はNFATc1と協調し、リンパ管の成熟に関わる。

    ■病態との関わり
    1)リンパ浮腫:先天性リンパ浮腫(Milroy病)はVEGF-R3変異、Lymphedema-Distichiasis症候群はFoxC2変異による常染色体優性遺伝病である。
    2)腫瘍:VEGF-C/D-VEGF-R3系の活性化は、転移や予後の増悪因子となる。所属リンパ節内のリンパ管新生は、リンパ行性転移に適した微小環境(リンパ管ニッチ)を提供し、転移拡大に寄与する。
    3)炎症・創傷治癒:炎症性メディエーターは間質細胞のVEGF-C、内皮のVEGFR-3発現を介しリンパ管新生を誘導する。集蔟したマクロファージや顆粒球もVEGF-C/D産生があり、局所浮腫・炎症性浸潤・抗原提示細胞の調節に関わる。
    4)移植免疫:宿主の新生リンパ管内皮のCCL21 は、移植片由来の樹状細胞のリクルートやアロ抗原認識を惹起し、拒絶反応に関わる。

    図表

    • 図1.リンパ管発生とリンパ管新生(参考文献2 Figure2改変)

    参考文献

    1) 血管研究と血管治療,実験医学増刊28(17),羊土社,2010.
    2) Tammela T, Alitalo K, Cell 140: 460-476, 2010.