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  • フィブリノゲン測定法 measurement of fibrinogen

    2015/02/17 作成

    解説

    [測定法と測定原理]


    1)トロンビン時間法(Clauss法)

    測定原理:血漿中に存在するアンチトロンビン、ヘパリンコファクターIIの影響を抑制するため、過剰量のトロンビンを添加して凝固時間を測定する。標準液の検量線からフィブリノゲン濃度を算出する。
    方法:検査する血漿をベロナール緩衝液(pH7.35)で希釈し、5分以内加温処理、トロンビン試薬添加後の凝固時間を測定する。検量線は、フィブリノゲン標準液をベロナール緩衝液で1:5、1:15、1:40に希釈して凝固時間を測定して両対数グラフから作成する。この検量線と対比してフィブリノゲン濃度を算出する。


    2)塩析法

    原理:血漿中のフィブリノゲンを硫酸ナトリウムで塩析し、その濁度を測定する。
    方法:カゼイン試薬と塩析試薬(硫酸ナトリウム0.55mol/l, 酢酸ナトリウム65.5mmol)を混和し、それぞれ被検血漿、検量用血漿、精製水を加え37度30分加温する。精製水を対照に以下の式を用いて、波長550nmで吸光度を測定する。検体用Ap、検量用As、試薬ブランク用Abの吸光度から被検血漿のフィブリノゲン濃度を算出する。フィブリノゲン濃度(mg/dl)=(Ap-Ab)/(As-Ab) x 検量用血漿の濃度

    3)免疫法
    測定原理:検査する血漿に抗ヒトフィブリノゲン血清を混合し、フィブリノゲン・抗体複合体の濁度からフィブリノゲン濃度を算出する免疫比濁法である。
    方法:被検血漿または生理食塩水及び標準液にトリスヒドロキシメチルアミノメタンを添加し、37度5分間反応させる。次に、抗ヒト・フィブリノゲンヤギ血清を添加し、37度5分間反応させる。主波長340nm、副波長700nmで濁度の吸光度を測定する。自動分析装置を用いて装置別プロトコールとパラメーターから血漿中のフィブリノゲン濃度を算出する。


    【基準範囲】
     トロンビン時間法(Clauss法)では150~350mg/dl、その他の方法では200~400mg/dl。

    【異常値を示す病態とそのメカニズム】
     フィブリノゲンは、血小板凝集による一次止血にもフィブリン網形成による二次止血も利用される重要な成分である。その減少は出血傾向をきたすことになる。フィブリノゲンは、プラスミンにより分解されるとフィブリノゲン・フィブリン分解産物(FDP)となる。その減少は、肝臓障害による産生低下や止血機序における消費、プラスミンによる分解等で減少する種々の病態を鑑別に入れておく必要がある。とくに出血傾向のない患者で、Clauss法で低値に遭遇した際に抗原量を測定し異常症を疑うことや異常症は出血だけでなく血栓形成を引き起こす可能性があることを考慮しておくことが重要である。一方、急性反応性物質として炎症時や悪性腫瘍で増加する。
    【異常値に遭遇した時の対応】
     800mg/dL以上では血栓傾向に注意が必要である。また、50mg/dL以下では出血傾向がみられる。播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患として感染症や悪性腫瘍が存在する場合は、フィブリノゲンが増加するためDICでもフィブリノゲン値が減少しない場合があるので注意を要する。そこで、フィブリノゲンが数日以内に50%ほど低下すれば、その値が基準範囲内であってもDICの可能性を考える必要がある。


    【その他のポイント】

     Clauss法は微量な被検血漿を用いることができ、簡便かつ短時間測定のため緊急検査にも対応できる。自動測定装置の適応性も高く、ビリルビン、ヘモグロビン、ヘパリンや中性脂肪の影響をほんど受けることのないため、国際的な標準法として利用されている。

    参考文献

    1) 新井盛大:血液凝固因子定量,フィブリノゲン臨床検査法提要(改訂第32版):419-421,2005.
    2) 北島勲:フィブリノゲン,高久史麿監修,臨床検査データブック2015-2016.医学書院,2015,373-375.