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  • フィブリノゲン・フィブリン分解産物(FDP) fibrinogen/fibrin degradation products(FDP)

    2015/02/17 作成

    解説

    【基準値】

     10 μg/ml未満(試薬により異なる)


    【測定法・測定原理】

     フィブリノゲン・フィブリン分解産物(FDP)は単一の分子ではなく、種々の分子量をもつ多様な分子の集合体である。したがって、抗フィブリノゲン・ポリクローナル抗体を用いて測定する血清FDP値であれば、低分子量から高分子量までのFDPをほぼカバーできる。
     従来は血清検体を用いた血清FDPの測定が一般的であった。この測定法は、採取血液にプラスミン阻害剤添加後、トロンビン・カルシウムを加え凝固させて作製した血清中に存在するFDPを、抗フィブリノゲン・ポリクローナル抗体で検出するという原理である。現在では、モノクローナル抗体を用いて血漿検体でもFDPを検出する血漿FDP試薬が開発され普及している。厳密に言えば、血清FDP試薬はフィブリノゲンの一部、フィブリンの一部、フィブリノゲン分解産物、フィブリン分解産物を検出するが、血漿FDP試薬は後二者しか検出しない。


    【異常値を示す病態とそのメカニズム】

     FDPが検出されるということは、フィブリノゲンおよびフィブリンがプラスミンによって分解を受けた断片が血中に存在するということであり、血栓形成と線溶反応を反映している。したがって異常値を示す代表的な病態は、播種性血管内凝固症候群(DIC)と血栓塞栓症である。特に線溶亢進が著明に起こる産科DIC(「産科領域のDIC」参照)では、FDPは著増する。一方、血栓形成が起こってもそれに続く線溶活性化が弱いDICの場合には、FDPの増加は軽度となる。たとえば感染症による敗血症性DICでは、反応性にプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)が著明に増加するため、プラスミンの生成が抑制されてフィブリンの溶解が進みにくく、FDPの増加は軽度である。DIC診断基準を満たしていなくてもFDPが増加している場合には、線溶亢進による出血傾向が潜在している可能性があり、臨床的に止血不全を呈することがあるので注意が必要である。


    【異常値に遭遇した際の対応】

     基礎疾患によりDICを疑う場合には、血小板数やプロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン値など他の検査値も参考にし、厚生省DIC診断基準に基づいて確定診断およびDIC治療を行う。
     臨床症状より血栓塞栓症を疑う場合には、血管造影や造影CT、MRI等の画像診断により、確定診断および血栓溶解・抗凝固治療を行う。


    【その他のポイント】

     血清FDPの測定にはトロンビン、カルシウム、プラスミン阻害剤を含有する専用採血管が必要であり、採血管コストや検体処理の煩雑さのため、用いる医療機関は減少しつつある。一方、モノクローナル抗体を用いて測定する血漿FDP値では、用いるモノクローナル抗体がどのくらいの分子量のフィブリン分解産物を標的としているかによって測定値が大きく異なる。この「血漿FDP測定試薬の未標準化」の問題は、臨床検体で得られたFDP値の解釈にとって非常に重要な意味をもつ。なお、、Dダイマー二次線溶反応を反映するのに対してFDPが一次線溶反応を反映するため、両者の臨床的意義はやや異なる。

    参考文献

    1) Madoiwa S, Kitajima I, Ohmori T, Sakata Y, Mimuro J: Distinct reactivity of the commercially available monoclonal antibodies of D-dimer and plasma FDP testing to the molecular variants of fibrin degradation products. Thromb Res 132: 457464, 2013.