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  • 血小板内顆粒とその放出機構

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     血小板は、α顆粒、濃染顆粒、リソソームの3種類の放出顆粒をもつ。α顆粒は、ひとつの血小板に数十個含まれ、比較的高分子のタンパク質因子,特に血小板の周囲環境を調節する因子(凝固・線溶因子,成長因子)を含有する。巨核球が産生するフォン・ヴィレブランド因子や血小板由来成長因子(PDGF)、凝固第V因子、血小板第4因子(PF4)、やエンドサイトーシスで取り込んだフィブリノゲンを含有する。さらに、α顆粒上の膜タンパク質として、PセレクチンやGPIIb/IIIa(インテグリンαIIb/β3)を含有する。α顆粒の欠損は灰色血小板症候群(α-storage pool deficiency)として知られ、Nbeal2の遺伝子欠損がその原因と同定されている。濃染顆粒はひとつの血小板内に数個あり、アデノシン二リン酸(ADP)やATP、セロトニン(5-hydroxytriptamine)、カルシウムイオンなどの小分子を含む。血小板濃染顆粒を欠く症例(δ-storage pool deficiency)では、皮膚の色素異常を伴うことが多く、両者を伴う場合はHermansky-Pudlak症候群と呼ばれる。血小板濃染顆粒および皮膚色素顆粒は、ともにリソソームの膜タンパク質をもつ放出顆粒であり、リソソーム関連小器官と分類され、形成・分泌メカニズムの多くが共通しているためである。また、血小板ではリソソームも放出されることが報告されている。


    【顆粒放出機構】

     血小板顆粒の放出は、細胞内カルシウムの上昇に依存する通常の制御性開口放出であるが、最も良く解明されている濃染顆粒の放出メカニズムを以下に概説する。カルシウムセンサーはMunc13-4であり、また、カルシウム依存性酵素PKCαはこの開口放出に必須である。細胞内膜輸送を制御するRab低分子量GTPタンパク質ではRab27bが制御するが、Rab27は非活性化血小板ですでに大半がGTP結合型の活性型であり、Rab27はスイッチとしては働かず、常に放出準備状態にしている。なお、Munc13-4はRab27のエフェクターである。最終段階はsyntaxin11、VAMP8、SNAP23のtrans-SNARE複合体の形成が担う。制御性開口放出制御因子Munc18bも重要である。また、血小板活性化に伴って活性化されるrasファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質Ralとそのエフェクターであるexocyst複合体繋留因子が、この開口放出のカルシウム感受性を亢進させる。