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  • チエノピリジン系抗血小板薬(チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル) thienopiridines

    2015/02/17 作成

    解説

     チエノピリジン系抗血小板薬(チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル)は、全てプロドラッグであり、消化管からの吸収の後に肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP(CYP)で酸化、活性代謝産物が生成され血小板膜上のアデノシン二リン酸(ADP)受容体であるP2Y12受容体に不可逆に結合することにより血小板機能を抑制する薬物である(図)。

     第一世代のチクロピジンは虚血性心疾患や脳梗塞をはじめ多くの動脈血栓症に我が国で保険適応があるが、肝障害(約2%)、無顆粒球症(0.3%)、極めて稀に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の副作用が報告されている。第2世代のクロピドグレルはチクロピジンの副作用を軽減した誘導体で虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈インターベンションが適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)に保険適応がある。
     クロピドグレルは、1996年アテローム血栓症患者を対象に行われたCAPRIE試験1)を始め多くのRCTが行われており、虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)、末梢動脈閉塞症等に幅広く全世界で使われている。
     クロピドグレルのADP凝集抑制作用は、個人差が大きく、抑制作用の弱い(一般的にADP凝集抑制率が40%以下、または全血凝集計VerifyNow-P2Y12では>230PRU)場合をクロピドグレル低反応性(またはレジスタンス)と呼ばれおり、臨床的に虚血性イベント(特にステント血栓症)と関連するといわれている。
     クロピドグレル低反応性の機序としては、服薬コンプライアンスの問題、腸管からの吸収効率、薬物代謝酵素CYP2C19の多型性、などの関与が考えられる。CYP2C19機能喪失型(*2、*3アレイ)の遺伝子多型が欧米人に比し日本人で頻度が高く、クロピドグレル低反応性の頻度は高いことが明らかとなっている。

     プラスグレルは、クロピドグレルより強力な第三世代チエノピリジン系薬剤として我が国で開発され、欧米での大規模臨床試験(TRITON-TIMI382))により既に欧州および米国では承認され、PCIが行われる急性冠症候群に適応を有している。
     TRITON-TIMI38試験では、プラスグレルの投与量はloading dose 60mg、維持量10mg/日であり、臨床効果のネットベネフィットは証明されたものの、大出血の危険因子として、75歳以上の高齢者、60kg以下の低体重、脳梗塞/TIAの既往が示され、プラスグレル投与の制限事項となった。しかし、我が国では欧米用量の1/3(loading dose 20mg, 維持用量3.75mg/日)で冠動脈領域のPCIで2つの治験(PRASFIT-ACS3) およびPRASFIT-ELECTIVE4)が行われ良好な成績が得られ、2014年日本で承認され経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)や安定狭心症、陳旧性心筋梗塞に保険適応を有する。プラスグレルの特徴は、効果発現が早く、日本人に多いCYP2C19の機能喪失型遺伝子多型の影響が少ないことである。

    図表

    • 図 チエノピリジン系抗血小板薬の構造

    引用文献

    1) CAPRIE Steering Committee: A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). CAPRIE Steering Committee. Lancet 348: 13291339, 1996.
    2) Wiviott SD, Braunwald E, McCabe CH, Montalescot G, Ruzyllo W, Gottlieb S, Neumann FJ, Ardissino D, De Servi S, Murphy SA, Riesmeyer J, Weerakkody G, Gibson CM, Antman EM; TRITON-TIMI 38 Investigators: Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med 357: 20012015, 2007.
    3) Saito S, Isshiki T, Kimura T, Ogawa H, Yokoi H, Nanto S, Takayama M, Kitagawa K, Nishikawa M, Miyazaki S, Nakamura M: Efficacy and safety of adjusted-dose prasugrel compared with clopidogrel in Japanese patients with acute coronary syndrome: the PRASFIT-ACS study. Circ J 78: 168492, 2014.
    4) Isshiki T, et al: PRASFIT-Elective Investigators. Prasugrel, a third-generation P2Y12 receptor antagonist, in patients with coronary artery disease undergoing elective percutaneous coronary intervention. Int J Cardiol 182C: 541548, 2015.