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  • 冠動脈インターベンション後の抗血小板療法

    2015/02/17 作成

    解説

    ■概要
     冠動脈インターベンション(PCI)ではそのほとんどにステントが留置される。ステントは血管内異物となるため、血小板凝集が惹起されて血栓を形成し、ひいてはステントの閉塞をきたす原因となる。ステント血栓症はときに致命的となるため、その予防のため強力な抗血小板療法がおこなわれる。


    ■抗血小板療法の実際

     1)DAPT(dual antiplatelet therapy)の確立

     当初はワルファリンとアスピリンの併用がなされたが、ステント血栓症防止効果が不十分のため、より有効なアスピリンとチエノピリジンの併用(DAPT)が行われるようになった。現在ではアスピリンとクロピドグレルの併用がステント留置後の標準的治療とされている。
     2)DAPTの期間
     ステント表面を新生内膜が被覆するとステント血栓症は発生しにくくなる。1か月ほどで被覆される通常のステント(BMS: bare metal stent)と異なり、薬剤溶出性ステント(DES: drug eluting stent)では薬剤の細胞増殖抑制作用により、ステント表面の被覆が遅れるため、長期間の抗血小板療法が必要である。これを踏まえ、内外のガイドラインではDAPTの期間をBMSでは1か月、DESでは12か月程度と提示している。なお、最新のDESではステント血栓症の頻度が大きく減少しており、DAPTの期間を6か月程度に短縮できる可能性が示されている。
     3)DAPTの注意事項
     アスピリンに合併する消化管出血はPCIの予後不良の因子として挙げられていることからこの対策は重要である。特に頻度が高い上部消化管出血の予防対策としてPPI(プロトンポンプ阻害薬)を併用することが推奨されている。
     4)新しい抗血小板薬とDAPT
     アスピリンの併用薬として2種類(プラスグレルとチカグレロール)の新薬が用いられる。作用機序は異なるが、いずれもクロピドグレルよりも効果の発現が早く、また抗血小板作用の個体差が少なく、欧米では特に急性冠症候群に対する使用が推奨されている。なお、プラスグレルは欧米の治験では出血性合併症が問題とされたが、日本では用量調節の結果、出血性合併症のリスクが高まるとのデータは示されていない。なお、後者は現在承認まちの状態にある。


    ■DAPT終了後の抗血小板療法

     DAPT終了後はアスピリンの半永久的投与が推奨されている。なお、アスピリンの出血性合併症が再評価されており、消化管出血の対策としてPPI(プロトンポンプ阻害薬)の併用が推奨されている。また、クロピドグレルの代替単独投与も検討されている。


    ■課題

     心房細動合併例など抗凝固薬を投与中の患者ではDAPTを併用すると出血性合併症が多発する。この対策として3者の併用期間を可及的に短くすることや、アスピリン抜きの併用療法などが検討されている。なお、NOAC(経口トロンビン阻害薬、経口活性化凝固第X因子阻害薬)とDAPTの併用については今後の課題である。

    参考文献

    1) 日本循環器学会:循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).
    2) 日本循環器学会:安定冠動脈疾患に対する待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).
    3) Saito S, Isshiki T, Kimura T, et al: Efficacy and safety of adjusted-dose prasugrel compared with clopidogrel in Japanese patients with acute coronary syndrome – The PRASFIT-ACS Study – . Circ J 78: 1684-92, 2014.