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  • 薬剤溶出性ステント(DES) drug-eluting stent(DES)

    2015/02/17 作成

    解説

    <概要>
     虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈インターベンションの問題点の一つである再狭窄は薬剤の全身投与やベアメタルステント (bare metal stent: BMS) を含めた各種デバイスを用いても、克服は困難であった。しかし、過剰な内膜増殖を抑制するための薬剤 (抗癌剤や免疫抑制剤など) をステントに塗布することで局所投与が可能となった薬剤溶出性ステント (drug-eluting stent: DES) が開発され、再狭窄率や再治療率が劇的に減少することが報告された。
     本邦では2004年8月よりシロリムス溶出性ステント (sirolimus-eluting stent: SES, Cypher stent) の臨床使用が可能となり、その後数種類の新しいDESが使用可能となっている。DESは上述のように内膜増殖を抑制し再狭窄率を減少させる一方で、血管の再内皮化も遅延させるためBMSと比較してステント血栓症 (stent thrombosis: ST)の頻度が高くなる可能性があり、BMSよりも長期間のアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬の併用 (2剤併用抗血小板療法) を要す。


    <構成要素>

     DESはその構成要素として、1) ステント本体 (プラットフォーム)、2) 薬剤を溶出させるためのポリマーなどの担体 (キャリアー)、3) 溶出される薬剤、の3つの要素からなり、異なった特性を持つ構成要素の組み合わせでいくつものDESが本邦でも使用可能となった。


    <第一世代・第二世代DES>

     SESが2011年で製造中止となり、本邦では現時点 (2014年4月) の時点で、パクリタクセル (PES)、 ゾタロリムス (ZES)、バイオリムス (BES)、エベロリムス (EES) 溶出性ステントが使用可能である。DESの世代分けの明確な基準はないが、一般的にはSES・PESを第一世代DES、ZES・BES・EESを第二世代DESと分類することが多い。第二世代DESでは、塗布する薬剤の変更や、ストラットをより薄くし、屈曲病変に適した構造や通過性の改善などプラットフォームに工夫がみられる。また、ポリマーを生体適合性のよいとされるものや生体吸収性のものへ改良したり、さらにはポリマーを血管壁と接するステントの外側のみ塗布しているものもある。
     第二世代DESのこれらの改良によりSTの発生率が減少する可能性があり、今後臨床試験の結果次第では2剤併用抗血小板療法の期間が短くなることが期待される。

    参考文献

    1) 宮山友明,小林欣夫:PCI(バルーン,ステント),循環器疾患最新の治療 2014-2015:103-108,2014.
    2) 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版),循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010 年度合同研究班報告):1-52,2011.