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GPIb/IX/V
解説
【概要】
血小板膜糖タンパク(glycoprotein, GP)Ib/IX/V複合体は、一次止血機構において最も重要な役割をはたす血小板特異的膜受容体である。血管損傷部位では露呈した内皮下組織にフォン・ヴィレブランド因子(VWF)が結合し、血小板はGPIb/IX/VとVWFの結合を介して粘着し、血小板血栓を形成する。また、GPIb/IX/VとVWFの結合は心筋梗塞、脳梗塞などの病的血栓症における関与も大きい。
【構造】
GPIb/IX/Vは、GPIbα、GPIbβ、GPIX、GPVの4つのサブユニットで構成され、血小板膜上ではそれぞれ2:4:2:1の分子比で存在する(図1)。GPIbα(分子量135kDa)とGPIbβ(25kDa)はジスルフィド結合によりGPIbを形成し、GPIbにはGPIX(22kDa)とGPV(82kDa)が非共有結合する。機能的受容体としての発現にはGPIbα、GPIbβ、GPIXの協調した遺伝子発現が必須である。4つのサブユニットには共通して生合成および機能発現に特に重要なleucine-rich repeat構造が認められる。また、それぞれのサブユニットの構造領域は実質的に一つのエクソン内に存在するなど、遺伝子構造もきわめて類似している。
【機能】
GPIb/IX/Vは一次止血以外にも、血液凝固、白血球や細菌との相互作用にもはたらく。主要なリガンドはVWFであるが、トロンビン、凝固第XI因子、凝固第XII因子、高分子キニノゲン、αMβ2、PSGL-1などとも結合し、結合部位はGPIbαのN末端にある。GPIbαの細胞内部位はフィラミンAを介してアクチンと結合し、血小板形態形成と保持に重要な役割をはたす。GPIbβは信号伝達を介して血小板活性化調節に関与する。GPVはトロンビンの基質となり限定分解されるが,その生理的意義は不明である。
【病態】
本複合体の先天性欠損は、重篤な出血症状を呈するBernard-Soulier症候群(BBS)を引き起こす。機能的受容体の発現にGPVは不要であり、GPV遺伝子異常が原因であるBSSの報告は無く、GPVノックアウトマウスはBSSとならない。GPIbαの一塩基多型Thr/Met145は血小板抗原HPA2-a/bの原因となり、血小板輸血不応症に関与する。冷蔵保存血小板製剤の血小板寿命低下は、GPIb/IX/V複合体のクラスター形成と肝臓マクロファージのαMβ2との結合による貪食が原因である。
図表
参考文献
1) Li R, Emsley J: The organizing principle of the platelet glycoprotein Ib-IX-V complex. J Thromb Haemost 11:605-614, 2014.