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  • Bernard-Soulier症候群 Bernard-Soulier syndrome

    2015/02/17 作成

    解説

    【病態・病因】
     Bernard-Soulier症候群は重篤な出血症状を呈する常染色体劣性遺伝性の先天性巨大血小板症である。GPIb/IX/V複合体の欠損が原因で起こる。血小板減少症と出血症状を呈するため、特発性血小板減少性紫斑病と診断され誤った治療を受けることが多い。


    【疫学】

     本症は100万人に1人の頻度とされる大変まれな疾患である。しかし、GPIb/IXを構成するGPIbα、GPIbβ、GPIXのいずれかの遺伝子のホモ接合性あるいは複合ヘテロ接合性変異により起こるため、500人に1人はヘテロ接合性保因者と計算される。日本人特有の遺伝子変異があり、九州沖縄地方で頻度が高い。


    【検査と診断】

     1)巨大血小板、2)血小板減少、3)出血時間延長、4)リストセチンによる血小板凝集欠如が古典的検査診断基準である。血小板減少を指摘されている血縁者があるかなど、家族歴の聞き取りは重要である。保因者では大型血小板と軽度血小板減少を認めることが多い(図1)。

     1, 2) 血小板は赤血球大に近く、自動血球計数装置による血小板数測定では実際の血小板数より低値を示す。末梢血塗抹標本における形態観察と目視による血小板数算定は特に重要である。
     3) 出血時間は15分以上も止血しない。
     4) 血小板凝集能検査ではアデノシン二リン酸(ADP)コラーゲン、エピネフリンなどの生理的血小板凝集惹起剤による凝集は認める。
     フォン・ヴィレブランド病と異なり、リストセチンコファクター活性(VWF活性)は正常である。
     フローサイトメトリーを用いてのGPIbα(CD42b)およびGPIX(CD42a)測定による診断が可能である(図2)。


    【治療】

     出血症状が著しい場合や手術などの外科的処置には血小板輸血を行うが、同種抗体産生に注意が必要である。血小板輸血不応に対しては遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の有効性が報告されている。

    図表

    • 図1
    • 図2

    引用文献

    1) Berndt MC, Andrews RK: Bernard-Soulier syndrome. Haematologica 96: 355359, 2011.
    2) Savoia A, Kunishima S, De Rocco D, Zieger B, Rand ML, Pujol-Moix N, Caliskan U, Tokgoz H, Pecci A, Noris P, Srivastava A, Ward C, Morel-Kopp MC, Alessi MC, Bellucci S, Beurrier P, de Maistre E, Favier R, Hézard N, Hurtaud-Roux MF, Latger-Cannard V, Lavenu-Bombled C, Proulle V, Meunier S, Négrier C, Nurden A, Randrianaivo H, Fabris F, Platokouki H, Rosenberg N, HadjKacem B, Heller PG, Karimi M, Balduini CL, Pastore A, Lanza F: Spectrum of the mutations in Bernard-Soulier syndrome. Hum Mutat 35: 10331045, 2014.

    参考文献

    1) 國島伸治:先天性血小板減少症の総説,先天性血小板減少症の診断と分子病態 臨床血液55:882-892,2014.
    2) 國島伸治:Bernard-Soulier症候群の総説,Bernard-Soulier症候群 血栓止血誌 16:179-186,2005.