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FGF(fibroblast growth factor)
解説
【概要】
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)は、1974年にウシ脳下垂体から線維芽細胞を増殖させる因子として発見された。当初、等電点の違いにより酸性のもの (acidic FGF/FGF-1)と、塩基性のもの (basic FGF/FGF-2)とに分類された。その後、次々と類似因子が発見され、現在25種類のファミリーメンバーが同定されている。FGFは、胎生期の中胚葉形成や器管形成に重要な役割を果し、生後の創傷治癒・組織再生をはじめとした種々の病態生理学的現象に深く関与する。
【構造と機能】
1) 分子量: 表を参照のこと。
2) 構造: 分泌タンパクであるにもかかわらずシグナルペプチドを持たない。なお、FGFファミリー (FGF)の中にはシグナルペプチドを持つものがある(表)。二量体を形成せず単量体として分泌される。
3) 機能:FGFは、受容体型チロシンキナーゼであるFGF受容体/FGF receptor (FGFR)のリガンドであるとともに、高いヘパリン親和性を有する。単量体として存在するにもかかわらずFGFRの自己リン酸化を誘導する背景には、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合が関係している。FGFRはFGFR1~4の4種類が同定されており(Ig-like domain IIIのsplicing variantの違いによるサブタイプを含めると7種類)、幅広い細胞種に発現している。FGFはFGFRに対しそれぞれ固有の結合特異性を示す(表)。FGFは多種の細胞に対し増殖、遊走の促進効果、保護効果、分化誘導効果を惹起する。また、FGF-2/bFGFは代表的な血管新生因子として知られる。
【ノック・アウトマウスの表現形】
FGF-2/bFGF-/-:軽度の低血圧や血小板減少以外に特別な異常を認めない。
FGFR-1-/-:胎生初期の細胞増殖や中胚葉細胞の移動障害により胎生致死。
FGFR-2-/-:胎生致死。
FGFR-3-/-:骨形成異常(椎骨、長管骨)、内耳発育異常。
FGFR-4-/-:特別な異常を認めない。
【病態との関わり】
創傷治癒を促進する因子として重要である。FGFR1遺伝子異常はPfeiffer症候群を、FGFR2遺伝子異常はPfeiffer症候群、Crouzon症候群、Jackson-Weiss症候群を引き起す。
図表
参考文献
1) 臨床免疫・アレルギー科 サイトカインのすべて,科学評論社,2012.