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  • スカベンジャー受容体 scavenger receptor

    2022/01/05 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
    スカベンジャー受容体は変性リポタンパク質の受容体でコレステロールやリポタンパク質代謝に関わる。当初、活性化したマクロファージで同定され、変性リポタンパク質を結合して細胞に内在化する機能をもつ。

    【構造と機能】
    マクロファージのスカベンジャー受容体は、変性LDLに結合できる共通の部分をもつ。CD36は分子量 88 kDa の高度にグリコシル化された膜貫通型タンパク質でスカベンジャー受容体クラスBに属する。スカベンジャー受容体BI(SR-BI)は進化的に保存されたCD36ファミリーの82 kDaの膜糖タンパク質で大きな細胞外ドメインと2個の膜貫通ドメインおよび短い細胞質側のアミノ末端基とカルボキシル末端がある。レクチン様酸化LDL受容体-1(Lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor-1, LOX-1)はおよそ50 kDaの表面タンパク質でスカベンジャー受容体クラス Eに属する。スカベンジャー受容体クラスA(SR-A)は 77 kDa の3量体タンパク質である。受容体のいくつかは複数のリガンドをもち、残りの受容体はパターン認識能力をもつ。さらに、受容体とリガンドの相互作用は情報伝達系を介してマクロファージの活性化、脂質代謝、そして炎症経路を制御する。その結果プラークの進展や安定化に影響する。

    【病態との関わり】
    スカベンジャー受容体、特にCD36 や SR-BIは血小板にも存在し脂質異常症や動脈硬化の進展に伴う血小板の過反応性に重要な役割を果たすと考えられている。スカベンジャー受容体クラスBは特に動脈硬化症、血栓症、心血管疾患の合併症との関わりが深い。スカベンジャー受容体の変性リポタンパク質との相互作用による血栓促進性、粥腫発生性の特徴をどのようにコントロールしていくことが効果的かの治療戦略は、はっきりとは定まっていない。CD36欠損マウスでは、野生マウスでは見られるJNKの抑制による血栓形成の遅延が見られない。CD36のアミノ酸160-168番は酸化ホスファチジル・コリンの結合ドメインである。このドメインのうち164と166番のリジン残基は進化的に保存されている。酸化ホスファチジル・コリン結合部位を模倣したペプチドは酸化LDLによる泡沫細胞形成や血小板活性化を抑制することが報告されている。血中LDLは内皮細胞LDL受容体への結合を介して内皮を通過して輸送される。内皮細胞上のSR-B1受容体も、HDLやLDLに結合でき、DOCK4蛋白質を介してLDLの内皮を通った動脈壁への送達に重要な役割を担う。この送達経路を阻害する介入はアテローム性動脈硬化症に対する新しい治療戦略になり得ると示唆される。

    参考文献

    1) Valiyaveettil M, Podrez EA: Platelet hyperreactivity, scavenger receptors and atherothrombosis. J Thromb Haemost 7 Suppl 1: 218-21, 2009.

    2) Chieko Mineo: Lipoprotein receptor signalling in atherosclerosis. Cardiovasc Res. 116(7):1254-1274, 2020.

    3) Linzhang Huang, Ken L Chambliss, Xiaofei Gao, Ivan S Yuhanna, Erica Behling-Kelly, Sonia Bergaya, Mohamed Ahmed, Peter Michaely, Kate Luby-Phelps, Anza Darehshouri, Lin Xu, Edward A Fisher, Woo-Ping Ge, Chieko Mineo, Philip W Shaul: SR-B1 drives endothelial cell LDL transcytosis via DOCK4 to promote atherosclerosis. Nature. 569(7757):565-569, 2019.