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プラーク破綻 plaque disruption
解説
概要
動脈硬化病変“プラーク”は、中心に脂質コアを含み、表面は線維性被膜で覆われている。心筋梗塞、不安定狭心症と虚血性心臓突然死の多くは、プラークの破綻を契機として、冠動脈内腔に血栓が形成され、内腔が閉塞ないし亜閉塞をきたすと考えられ、総称して急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)と呼ばれている。
プラーク破裂とびらんの定義・頻度
プラーク破綻は、線維性被膜が破れ、脂質成分が血液と直接触れることで血栓が形成される“プラーク破裂”と、線維性プラークの表層がびらん性変化に伴って血栓が形成される“プラークびらん”に大別される。急性冠症候群(ACS)の70-80%は、プラーク破裂に伴うもので、20-30%はプラークびらんに伴うことが報告されている。
病理組織所見と病態
プラーク破裂は、上記に示したように脂質コアを覆う線維性被膜の破綻により脂質コア成分が血液と直接接触するもので、破裂しやすいプラークは不安定プラークと呼ばれ、脂質コアが大きく、線維性被膜は薄く、マクロファージ、リンパ球などの炎症細胞浸潤が目立ち、血管新生に富むと報告されている(図1a)。プラーク破裂の真のメカニズムは不明であるが、組織学的所見から、平滑筋細胞やマクロファージの細胞死、マクロファージなどによる細胞外基質の分解により、被膜が破れると考えられる。被膜が破綻すると血液がプラーク内へ流入し、プラーク内で強く発現している組織因子などが血液と直接接することにより血小板と凝固系が急激に活性化され、血管を閉塞する血栓が形成されると考えられている。
プラークびらんは、プラーク破裂とは異なり、被膜の浅い傷害で、破綻が脂質コアに達しないものを呼ぶ。プラークびらんの組織像は、線維性プラークを中心して構成され、通常脂質沈着や炎症細胞浸潤に乏しく、脱分化型平滑筋細胞とプロテオグリカンに富んだプラークの事が多い(図1b)。女性、喫煙者、糖尿病に多く、内皮細胞死や血管攣縮も関わる可能性が示唆されているが、プラークびらんのメカニズムは不明な点が多い。
動脈の血栓は、血小板を中心に考えられてきたが、急性心筋梗塞患者の剖検例を病理組織学的に検討すると血小板の凝集像とともに大量のフィブリンの析出が観察される。またプラーク破裂とびらんでは形成される血栓の組成が多少異なる。破裂部の血栓は、血小板よりフィブリン血栓の割合が高く、血栓サイズも大きいことが多い。びらんにともなう血栓では、血小板の占める割合はやや高く、血栓サイズはやや小さい傾向にある。
図表
参考文献
1) Bentzon JF, Otsuka F, Virmani R, Falk E: Mechanisms of plaque formation and rupture. Circ Res 114: 1852
2) Sato Y, Hatakeyama K, Yamashita A, Marutsuka K, Sumiyoshi A, Asada Y: Proportion of fibrin and platelets differs in thrombi on ruptured and eroded coronary atherosclerotic plaques in humans. Heart 91: 526