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    2015/02/17 作成

    解説

    【測定法・測定原理,基準値】
     T-TAS®(total thrombus-formation analysissystem)は、血流下における全血の血栓形成能を解析する装置である。本装置は、コラーゲンを固相化したマイクロチップ内の流路にポンプを用いて全血を流し込み、血栓が形成され流路が閉塞するまでのマイクロチップ内の圧力上昇をグラフとして連続的に記録することが可能である。
     T-TAS®による血栓形成能測定には、2種類のマイクロチップ(PLチップ、ARチップ)が使用可能である。PLチップはコラーゲンを固相化した幅40μmの分割流路25本を有しており、抗凝固剤ヒルジンが添加された全血を高ずり応力下(1000~2000/sec)で流して測定することにより、主として血小板が関与する血栓形成能(白色血栓形成能)を評価することができる。ARチップはコラーゲンに加えて組織因子を固相化した幅300μmの単流路を有しており、凝固線溶系因子を含めた全血の血栓形成能を評価することができる。さらに本装置の特徴として、チップ内に血栓が形成される過程を、ビデオカメラによって視覚的に観察することが可能である。血液サンプルの必要量は、数mL程度であり、全血を遠心操作なしでそのまま使用可能である。
     T-TAS®により得られる圧力波形から、閉塞開始時間・閉塞終了時間・血栓形成時間・圧力曲線下面積(area under the flow pressure curve: AUC)などの血栓形成能と関連するパラメータを算出することができる(図)。これらは、全血における血流下の血栓形成能を反映していると考えられる。健常人における基準値については、現在検討が進められている。

    【T-TAS®測定の有用性について】

     PLチップでは高ずり応力下での血小板血栓形成能が評価可能であることより、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬の効果をモニタリングできるPOCT(point of care testing)の可能性が示されている(参照「抗血小板療法のモニタリング」)。また、ARチップでは凝固線溶系因子が関連するフィブリン形成能を含んだ血小板血栓形成能を評価することが可能であることより、ヘパリンアルガトロバンなどの抗凝固療法のPOCTとして期待されている。

     他にも本装置を用いた検討として、ワルファリン作用を中和する血液製剤の効果、フォン・ヴィレブランド病(VWD)の病態解析にも有用性が示されている。さらに、メタボリックシンドロームにおける血栓形成能亢進状態を検出できる可能性について検討が進められている。また、マウスモデルにおける血栓形成能を測定する手段として本装置が有用であることが報告されている。T-TAS®を使用した血栓形成能の評価に関する有用性の検討は、今後様々な分野で拡がることが予想される。

    図表

    • 図 T-TASにおける圧力曲線と測定値(文献2から引用して作成)

    参考文献

    1) 細川和也,大西朋子:新規血栓形成能解析システム”T-TAS”を用いた抗血小板薬の薬効解析,別冊Bio Clinica 慢性炎症と疾患 2:128-131,2013.
    2) 森木隆典,松原由美子:血流下血栓形成能診断システム(T-TAS)の有用性,検査と技術41:802-804,2013.
    3) 細川和也,大西朋子:新規デバイス”T-TAS”を用いた血小板血栓形成プロセスの包括的解析,細胞 43:77-81,2011.