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PCI施行時の抗凝固療法
解説
PCIは冠動脈内の動脈硬化巣を破壊する。血管壁破綻部位には必ず血小板が接着する。PCI後の血小板接着、血栓形成は確実に起こる。血栓が大きくなって冠動脈を閉塞する、または血栓が末梢に塞栓すると臓器虚血症状が起こる。これらの症状の予防を目指して抗血小板療法が施行される(参照:冠動脈インターベンション後の抗血小板療法)。
PCI後の冠動脈内局所の血栓性は著しく高いので、アスピリン単剤に比較してアスピリン・クロピドグレルの抗血小板併用療法の有用性が大きい。PCI後、特にステント留置後一定期間の抗血小板併用療法は世界の標準治療である。PCI時のステントが開発された当初には、ステント留置の数日後に起こるステント血栓症予防に抗凝固薬は無力とのエビデンスが発表された。しかし、以前から心筋梗塞再発予防にはアスピリンよりも抗凝固薬ワルファリンの有効性が示されており、抗凝固薬ヘパリンは急性期に広く使用されていたので、PCI時の抗凝固療法も大きな開発標的とされた。
抗凝固薬として欧米諸国ではアルガトロバンに比較して可逆性の少ないビバルイジンが使用された。急性冠症候群の臨床試験を見ると、ビバルイジンが普及していることがわかる。本邦では未分画ヘパリン以外の経静的抗凝固薬の選択はない。
経口トロンビン阻害薬、心房細動と抗凝固療法が開発された時にも急性冠症候群への適応拡大を目指したランダム化比較試験が施行された。アピキサバン、リバロキサバンでは精緻な用量のための第II相試験ののちに、第III相試験が施行された。アスピリン・クロピドグレルの抗血小板併用療法を標準治療として、その上に経口活性化凝固第X因子阻害薬(Xa阻害薬)またはプラセボが使用された。リバロキサバンでは心房細動の脳卒中予防の予防(参照:心房細動と抗凝固療法)に用いた20mg/日に比較した極微量の2.5mg一日2回および5mg一日二回の用量を選択し、有効性一次エンドポイントにおいてプラセボに勝った。アピキサバンでは心房細動の脳卒中予防と同用量を用いて有効性においてプラセボとの差を出せなかった。いずれの薬剤も重篤な出血イベントは著しく増加させた。患者集団における有効性、安全性の検証結果を個別患者に応用することが困難であることが示された。