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  • Chediak-Higashi 症候群 Chediak-Higashi syndrome

    2015/02/17 作成

    解説

    【疾患概念】

     Chediak-Higashi 症候群は、重篤な易感染性に加えて、皮膚や眼の色素脱出、進行性の神経症状、好中球などの食細胞の細胞質に特徴的な巨大顆粒を認める先天性疾患である.本症は、血小板の濃染顆粒の異常に基づく放出障害に起因した易出血性を示し、類縁疾患であるHermansky-Pudlak 症候群とともに、δStorage pool病に分類される.


    【病態・病因】
     本症の責任遺伝子は第1染色体q23に位置し、巨大な細胞質タンパクであるLYST(lysosomal trafficking regulator)/CHS1をコードする.類縁疾患のHermansky-Pudlak 症候群で欠損しているHPSタンパクも含んだ当該タンパクファミリーは真核生物に広く存在し、自然発症Chediak-Higashi 症候群モデルであるベージュ(beige)マウスの解析などから、食細胞のライソソーム、色素細胞のメラノソームあるいは血小板の濃染顆粒などの細胞小器官の形成や細胞内輸送(lysosome-related organelles trafficking)に深くかかわっていると推測されるが、具体的な機構は未だに不明である.LYST/CHS1の異常により好中球などの免疫細胞のライソソームの生成障害が起こり、細胞質に巨大な封入体が形成され、食細胞作用の障害により重症感染症が招来される.一方、皮膚、毛髪あるいは網膜の部分的な色素脱出が起こり、血小板の濃染顆粒の量的・質的異常により軽度の出血傾向を示す.


    【疫学】

     本症は極めてまれである.遺伝形式は常染色体劣性で、我が国では原発性免疫不全症(食細胞不全症)として公費負担の対象疾患となっている.


    【検査・診断】

     特徴的な臨床所見(部分的白子症、繰り返す細菌感染症など)及び末梢血塗抹標本での好中球細胞質封入体(メイ・ギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色)で診断は容易である.血小板機能検査では、二次凝集の欠如やセロトニンの放出障害などで、δStorage pool病を示唆する.


    【治療・予後】
     対症的に対応し、出血の治療や予防には他の血小板機能異常症と同様の処置を行う.造血幹細胞移植が唯一の根本治療であるが、神経症状は進行する.感染症やリンパ網内系の異常増殖に関連した急性増悪により10歳までに死亡する.

    参考文献

    1) Masliah-Planchon J, Darnige L, Bellucci S: Molecular determinants of platelet delta storage pool deficiencies: an update. Br J Haematol 160: 511, 2013.
    2) 半田 誠:Hermansky-Pudlak 症候群,血栓止血誌 12:223-230,2001.