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  • ヘパリン類(未分画へパリン、低分子量へパリン、ダナパロイド) heparin groups (unfractionated heparin, low molecular weight heparin, danaparoid)

    2022/02/21 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    1) 一般名

     未分画へパリン(ノボ・ヘパリン、カプロシンなど)、低分子量へパリン(フラグミン、クレキサンなど)、ダナパロイド(オルガラン)

    2) 適応
    ・ 未分画へパリン: 播種性血管内凝固(DIC)の治療、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、輸血及び血液検査の際の血液凝固の防止、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の治療及び予防。
    ・ 低分子量へパリン(フラグミン):血液体外循環時の還流血液の凝固防止、DIC。
    ・ 低分子量へパリン(クレキサン):下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制(股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術)、静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症予防。
    ・ ダナパロイド:DIC。

    3) 副作用・禁忌
    三薬ともに、ほぼ共通の副作用、禁忌がある。ただし、低分子量へパリン、ダナパロイドは、未分画へパリンよりも副作用が少ないとされる。
    <副作用>ショック、アナフィラキシー様症状、出血、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、肝障害、骨粗鬆症など。
    <禁忌>出血している患者、出血する可能性のある患者、重篤な肝or腎障害、HIT既往のある患者など。


    4) 作用機序

    アンチトロンビン依存性に抗凝固活性を発揮する。ただし、抗Xa/トロンビン比、半減期などの差異がみられる(表1)。 ヘパリン類が、抗Xa作用を発揮するためには、ヘパリン類とアンチトロンビンとの結合のみで十分である。一方、抗トロンビン作用を発揮するためには、ヘパリンがアンチトロンビンとトロンビンの両者に結合する必要がある(17個以上の糖鎖をもつヘパリンのみが可能であり、低分子量へパリンは不可能)。そのため、低分子量ヘパリンは、抗トロンビン作用が弱い。


    5) 半減期・代謝経路

    半減期を表1に示す。いずれも腎代謝が主体であるために、腎障害症例では減量などの配慮が必要である。

    6) その他のポイント・お役立ち情報
    へパリンカルシウムの「在宅自己注射」(ヘパリンカルシウム皮下注5千単位/0.2mLシリンジ「モチダ」)は、平成24年1月1日に保険適用認可された。在宅でヘパリン治療できることの患者へのメリットは大変に大きい。
    抗リン脂質抗体症候群患者の不育症(習慣性流産)、大動脈瘤などに合併した慢性DICなどの在宅治療が、以前よりも容易になった。
    へパリン類の各薬剤における長所と短所を表2に示す。

    図表

    • 表1 ヘパリン類の比較

    参考文献

    1) 朝倉英策:ヘパリン類,アルガトロバン,朝倉英策編,臨床に直結する血栓止血学 改訂2版.中外医学社,2018,583-590.
    2) 朝倉英策:ヘパリン類など,しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編.中外医学社,2015,54-65.