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  • Heyde症候群 Heyde syndrome

    2015/02/17 作成

    解説

    【病態・病因】

     高度な大動脈弁狭窄症に伴う消化管出血として1958年にHeyde博士が報告した疾患である。フォン・ヴィレブランド因子(VWF)は巨大マルチマー(複合体)として血管内皮細胞等で産生されるが、高度の大動脈弁狭窄症の大動脈弁部で生じる速い血流のためにVWFがADAMTS13によって切断されやすくなり、高分子マルチマーが欠損することがある。これは、血液学的にはフォン・ヴィレブランド病(VWD)2Aと同様の病態である。この後天性フォン・ヴィレブランド症候群(aVWD)をベースに、毛細血管の拡張を伴う消化管血管異形成部位(angiodysplasia)からの出血をきたす疾患がHeyde症候群である。

    【疫学】

     Tamura等の報告(J Atheroscler Thromb, 2015)によれば、高度大動脈弁狭窄症症例のほとんどで程度の差こそあれ、VWSの発症が認められている。そのうち消化管出血を頻度に関しては不明である。

    【検査・診断】 高度大動脈弁狭窄症が有り、消化管出血をきたせば診断される。近年、この原因がaVWSと明らかとなり、aVWSの診断のためにはVWF活性・抗原・マルチマー解析が必要である。なお、消化管血管異形成は、消化管のすべての場所に生じる可能性があり、小腸に生じた場合にはカプセル内視鏡等がその診断に必要である。また本疾患の病因としては、消化管血管異形成は、高齢者ではしばしば生じるので、大動脈弁狭窄症を来しやすい高齢者に偶然に生じたものであるとする説と、大動脈弁狭窄症によって脈圧が低下するために生じたとする説があり、結論を見ていない。


    【治療の実際】

     根本治療は大動脈弁の置換である。出血傾向を伴う症例への心臓手術であるが、血漿輸血等によってVWFを補充でき、手術は可能であり、大動脈弁置換後には速やかにVWF高分子マルチマーは回復し、消化管出血を来さなくなる。

    【その他】
     このHeyde症候群は、高度な大動脈弁狭窄症によって生じる高ずり応力が主因となっているが、高ずり応力を来す他の循環器疾患、すなわち、肥大型閉塞型心筋症や肺高血圧症等、さらには、経皮的補助循環PCPS、体外式左室補助LVAD、埋め込み型補助人工心臓等の機械的補助循環治療に際してもaVWSが生じることが報告されており注目されている。