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  • フォン・ヴィレブランド病(VWD) von Willebrand disease(VWD)

    2021/11/06 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【病態・病因】
    フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand disease;VWD)は、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor;VWF)の量的・質的異常により出血傾向をきたす先天性凝固異常症であり、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、3型の6病型に分類される(表)。鼻出血、紫斑・皮下血腫、口腔粘膜出血、月経過多など血小板凝集障害を思わせる出血症状が多いが、3型を中心に、関節・筋肉内出血、頭蓋内出血など血友病類似の出血をきたすこともある。

    【疫学】
    先天性凝固異常症としては血友病に次いで多く、本邦では人口10万人あたり0.56~0.6人と報告されている1-2)が、疾患定義の差異にもより、諸外国での報告には同1~9.3人と開きがある1-3)。多くは常染色体優性遺伝形式をとり、男女間差は認めない。
    【検査と診断】
    VWF活性および抗原量は健常人での変動が大きく、鼻出血や月経過多などは一般的にも認められるため、軽症の1型VWDの診断は容易ではない。2N型で、軽症~中等症の血友病Aとの鑑別が問題となる場合には、FVIII結合能アッセイも検討される。その他病型の検査値の特徴は表中に示した。
    【治療の実際】
    内因性VWFの放出を促す酢酸デスモプレシン(DDAVP)は1型、および2A型・2M型・2N型の一部症例では有効であるが、VWF血中半減期はおよそ12~20時間で、DDAVP反復投与によりVWF放出効果は急速に減弱することから、重症出血の治療や、軽微でない観血的処置時の止血治療には向かない。トラネキサム酸は血友病同様に用いられる。
    VWF含有濃縮凝固FVIII製剤はすべての病型に有効である。投与量に関しては、血友病に対する凝固因子製剤の投与法ほど定まったものはない。3型症例の10%程度にアナフィラキシー症状を呈する抗VWFインヒビターを生じるという問題があり、インヒビター症例には、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤や、VWF非含有の遺伝子組換え第VIII因子製剤(持続輸注)が用いられることもある。

    図表

    • 表:von Willebrand病の分類

    引用文献

    1) 西野正人:von Willebrand病の診断と治療,日小血会誌 13:410-20,1999.
    2) 西野正人,松井太衛,松下正他:本邦におけるvon Willebrand病患者調査報告,血栓止血誌 19:311-18,2008.
    3) 松下正:von Willebrand因子とvon Willebrand病,現代医学 58:239-51,2010.

    参考文献

    1) 白幡聡編,みんなに役立つ血友病の基礎と臨床,2009.
    2) 松下正:von Willebrand因子とvon Willebrand病,現代医学 58:239-51,2010.
    3) 西野正人, 吉岡章:血液・腫瘍性疾患 von Willebrand病,小児内科 35:1169-74,2003.
    4) 西野正人:von Willebrand病の診断と治療,日小血会誌 13:410-20,1999.
    5) 高橋芳右:von Willebrand病の診断と治療,血栓止血誌 18:572-4,2007.
    6) 西野正人:von Willebrand病,血栓止血誌 11:104-12,2000.