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  • 血管内皮細胞による抗血栓作用

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     血管の内腔を被覆する血管内皮細胞は,強力なネガティブチャージにより血小板をはじめとする血球成分の接着を抑制する.また抗血小板・抗凝固作用ならびに高線溶作用を通して血栓形成を抑制し,血管壁の恒常性維持に寄与する.

    【作用機序】
    1)血小板活性化抑制作用:血管内皮細胞は,強力な血小板活性化抑制作用を有するNO(一酸化窒素)プロスタサイクリン(PGI2を産生する.またecto-ATPaseによる細胞外アデノシン二リン酸(ADP)の代謝促進も血小板の活性化を抑制する.

    2)凝固カスケード抑制系:通常,血液と接する面に組織因子(TF)は発現していないため,血管内において凝固系活性化機転は生じ難い.また止血血栓形成時には内皮欠損部を超えて凝固反応が進展しないように,正常血管内皮は凝固活性を抑制する機構をもつ.
    ①内皮表面のヘパラン硫酸は凝固系インヒビターの活性発現の場を提供する.
    i)tissue factor pathway inhibitor(TFPI)によるTF結合FVIIa活性阻害
    ii)アンチトロンビン(AT)によるFXaおよびトロンビン活性の阻害
    ②内皮表面のトロンビン結合タンパクであるトロンボモジュリン(TM)はトロンビンの凝固活性を失活させ抗凝固因子であるプロテインC(PC)の活性化能を与える.活性化PCはプロテインS(PS)の存在下でFVaとFVIIIaを限定分解して不活化することにより過剰な血栓形成を抑制する.トロンビンの酵素活性を利用した凝固反応に対する強力な負のフィードバック機構である.

    3)高線溶ポテンシャル:血管内線溶反応開始因子である組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)血管内皮細胞から分泌される.血栓形成局所ではFXaやトロンビンにより,その分泌は反応性に増大する.生理的には,止血血栓が増大しすぎずそして血管壁の修復とともに血栓が消退するよう,凝固系の活性化あるいは血栓形成程度に応じて線溶活性は時空間的に巧妙に制御されて発現し,不要あるいは過剰血栓を溶解している.

    参考文献

    1) 鈴木優子他:凝固線溶系分子による血管内皮細胞機能の維持,血液内科 69(3):2014.