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  • NO(一酸化窒素) NO(nitric oxide)

    2022/06/28 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
    一酸化窒素(nitric oxide, NO)は生体内で合成され、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用などの多様な生理作用をもち、血栓症を含む循環器系疾患とも深く関わっている。

    【構造と機能】
    窒素酸化物の一種で、無色、無臭の気体である。不対電子を持つラジカル種ではあるもののラジカルとしての反応性は低く半減期も数秒と短い。生体内では一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase, NOS)によりLアルギニンから合成される。細胞内にある可溶型グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylate cyclase, sGC)を活性化してサイクリックGMP(cGMP)を増加させることにより情報伝達に関与する。血管内皮細胞から産生されるNOは、以前は内皮由来弛緩因子(EDRF, endothelium-derived relaxing factor)とも呼ばれていたように、血管拡張作用があり降圧作用を発揮する。他に血小板凝集抑制作用、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用、神経伝達などにおける情報伝達作用、殺菌作用など多様な生理活性が報告されている。

    【病態との関わり】
    NOは血管拡張作用があるため、その不足は血管の内皮機能の低下や高血圧に関係する。また血管平滑筋増殖抑制作用は動脈硬化症の抑制、そして血小板凝集抑制作用は血栓症の制御に関連する。NOは平滑筋のCa2+感受性を抑制し、冠血管の攣縮を予防する。NOのドナーとなる物質やNO合成に関わるNOSの発現を制御する物質は高血圧症、動脈硬化症、血栓症、肺高血圧症などの疾患の治療薬として期待されている。例えば、狭心症治療薬のニトログリセリンや硝酸イソソルビドは細胞内でNOを発生することで血管平滑筋を弛緩する。また、NO吸入療法は、心臓手術の周術期の肺高血圧症の改善に使用されている。血管内皮からのNO放出能を見る臨床検査としてFlow-mediated dilation(FMD, 血流依存性血管拡張反応)がある。これは、カフで腕を一端締め、その後緩めると内皮細胞はNOを放出し血管が拡張する様子を超音波で測定する検査である。血管拡張が少ない場合は内皮機能が低下していることを意味する。

    参考文献

    1) Furchgott RF, Zawadzki JV: The obligatory role of endothelial cells in the relaxation of arterial smooth muscle by acetylcholine. Nature 288: 373-376, 1980.

    2) Green DJ, Dawson EA, Groenewoud HM, Jones H, Thijssen DH: Is flow-mediated dilation nitric oxide mediated?: A meta-analysis. Hypertension 63: 376-382, 2014.

    3) Kedar Ghimire, Helene M. Altmann, Adam C. Straub, Jeffrey S. Isenberg: Nitric oxide: what’s new to NO? Am J Physiol Cell Physiol.: 312; C254–C262, 2017.