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  • 経皮的冠動脈インターベンション percutaneous coronary intervention

    2015/02/17 作成

    解説

    1) 概要
     経皮的動脈形成術(percutaneous transluminal angioplasty)は、急性冠症候群を代表とする虚血性心疾患に対する冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)、下肢動脈を主体とする末梢動脈(鎖骨下動脈、腎動脈なども)に対する血管形成術、内頸動脈狭窄に対する形成術、透析シャント狭窄・閉塞に対する形成術がある。また近年では大動脈瘤に対するステントグラフト(endovascular aneurysm repair : EVAR)や、経カテーテル大動脈弁留置術(trans catheter aortic valve implantation : TAVI)なども行われるようになってきている。
     高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙等の古典的危険因子を基盤に慢性炎症や酸化ストレス亢進等が、その病態として考えられているが、未だ不明な部分も多い。
     

    2) 疫学

     日本循環器学会による循環器疾患診療実態調査によると2013年の緊急PCIは68,254件、待機的PCIは185,072件で2010年からはほぼ横ばいである。動脈形成術は2013年61,422件で2010年から毎年約5,000件ずつ増加傾向にある。


    3) 検査と診断、適応

     安定冠動脈疾患に対する待機的PCIは冠動脈造影のみならず、虚血の存在が重要である。その検査方法としては運動負荷心電図検査や負荷シンチグラフィーが主体である。また冠血流予備量比(fractional flow reserve : FFR)も有用であり、FFR<0.75がPCIの適応である。冠動脈バイパス術(CABG)の選択は常に考慮すべきで、左主幹部病変、3枝病変は原則CABGを選択する。
     肢の末梢動脈疾患(peripheral artery disease : PAD)の治療は部位と、跛行肢か重症虚血肢かで異なる。跛行の症状(Fontaine分類、Rutherford分類)を元に、ABI検査、造影CT、血管造影検査、皮膚灌流圧(SPP)などで治療方針を決定する。腸骨動脈領域や大腿膝窩動脈領域は血管内治療の適応となるが、膝窩動脈より末梢は血管内治療の長期開存は不良で血管内治療の適応は乏しく自家静脈によるバイパス術が適応となる。重症下肢虚血の場合は血管内治療が行われる。
     腎動脈の狭窄に関しては、高血圧、腎機能低下を契機とし、レニンの上昇、腎血管エコー、造影CT、血管造影等で評価する。治療の適応に至っては狭窄解除で改善が見られない症例があることや、造影剤で腎機能が悪化する症例などあり、明確な適応が無いが、心不全や肺水腫、急性進行性や薬物コントロール不良の高血圧が適応となる。エコーでのpeak systolic velocity 220cm/秒以上も適応とされる。
     鎖骨下動脈狭窄の治療は鎖骨下動脈盗血現象や内胸動脈バイパス術時の盗血現象などの際に適応となる。少なくとも50%以上の狭窄があり、上肢血圧左右差20mmHg以上あることが適応となる。
     頚動脈ステント治療の適応は症候性の症例においては50%以上の狭窄、無症候性では80%以上の狭窄において適応とされる。拡張に伴う末梢塞栓による脳梗塞は末梢保護を行っても起こりうる合併症であり、無症候性では3%、症候性では6%以内にすることがガイドラインでも目標値とされている。
     透析シャントの血管内治療は脱血血液量低下、返血圧上昇などの際に適応となる。
     大動脈瘤に対するステントグラフトはMDCTを用いて、形態やlanding zoneを確保するための治療戦略組み立てが必要となる。一般的に胸部下行大動脈瘤、腹部大動脈瘤に対して用いられている。最近、弓部大動脈瘤大動脈解離に対しても中枢のみの開胸による外科的吻合を行い、末梢はステントグラフトでカバーするopen stent法が用いられてきている。

    参考文献

    1) 日本循環器学会:安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版),循環器疾患診療実態調査.