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  • 血小板凝集能検査(透過度法)

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     血小板は粘着・放出・凝集といった機構を介して一次止血栓を形成する.血小板凝集能検査は血小板機能のひとつである凝集能を調べる検査法である.透過度法は1962年にBornによって開発された血小板凝集能検査で、複数存在する血小板凝集能検査の中で標準法とされている.

    【基準値】
     基準値は存在しない.高濃度アゴニスト刺激によっても凝集を認めない際には異常である.


    【測定法・測定原理】

     クエン酸ナトリウムで抗凝固した血液から、遠心分離により多血小板血漿(platelet-rich plasma; PRP)と乏血小板血漿(platelet-poor plasma; PPP)を作成する.それぞれをガラスキュベットに入れて、PPPを測定した時の光透過率を100%、PRPを測定したときの光透過率を0%に設定する.37℃で撹拌条件下に血小板活性化物質をPRPに添加すると、血小板同士が凝集塊を形成し,結果として光透過度が亢進する.この変化を経時的に記録することで凝集曲線が得られ、血小板凝集能を評価することができる.


    【異常値を示す病態とそのメカニズム】

     血小板刺激物質としてアデノシン二リン酸(ADP)コラーゲン,リストセチンを用いるのが一般的である.ADPやコラーゲンが血小板膜上の受容体に結合すると活性化され,最終的に膜糖タンパクGPIIb/IIIaを活性化し,フィブリノゲンを介して凝集反応が起こる.血小板無力症、無フィブリノゲン血症ではADPやコラーゲンによる凝集がみられない.リストセチンは他の血小板活性化物質と機序が異なり、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)とその受容体である血小板膜糖タンパクGPIbとの結合を介した血小板凝集をおこす.リストセチンはホルマリン固定された血小板でも凝集を惹起させることができ、この凝集反応をagglutinationと呼ぶ.Bernard-Soulier症候群フォン・ヴィレブランド病(VWD)でリストセチンによる血小板凝集がみられない.凝集反応は一次凝集と二次凝集に分けられ,一次凝集は低濃度アゴニストによる可逆性の反応である.二次凝集は活性化された血小板より放出されたADP、トロンボキサンA2(TXA2)などに依存した凝集であり、間接的に血小板放出能を知ることができる.そのため、Storage pool病やTXA2異常症などの放出機能異常を伴う疾患で二次凝集がみられない.


    【異常値に遭遇した際の対応】

     高濃度のADPやコラーゲンで反応が認められない時には血小板無力症を疑う.VWFの反応性が低下している際にはVWDを考え,巨大血小板や軽度の血小板減少を認めるときにはBernard-Soulier症候群を鑑別する.軽度の低下の際には必ず抗血小板薬や非ステロイド性抗炎症薬による薬剤性の血小板機能低下症を除外する.


    【その他のポイント・お役立ち情報】

     血小板数が低下している場合は、見かけ上の凝集能が低下することがあるので、必ず健常人対照をおく.Bernard-Soulier症候群のような巨大血小板が存在する場合は、通常の遠心条件では血小板が除かれてしまうため、PRP作成時の遠心条件を緩くする.また,光透過度による評価のため,乳糜血漿は評価が困難である.

    参考文献

    1) 奥村信生,戸塚 実,矢冨 裕:臨床検査法提要 第33版:338-340,2010.
    2) 佐藤金夫:血小板機能検査を依頼する際に注意すべきこと,検査と技術38(9):719-721,2010.