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フィブリノゲン・フィブリン fibrin / fibrinogen
解説
【分子量,半減期,血中濃度】
フィブリノゲン(Fbg)は血液凝固反応の最終段階でトロンビンの作用によりフィブリン(Fbn)に変化し、血液凝固・止血・血栓形成だけでなく、創傷治癒、炎症、血管新生、妊娠継続および細胞あるいはマトリックス間の相互作用などに関与する分子量340kDaの糖タンパクである。肝細胞で1日当たり約2g産生され、血漿中には200-400 mg/dL存在し、半減期は3~4日である。
【構造と機能】
FbgはAα鎖(アミノ酸数610個)、Bβ鎖(461個)、γ鎖(411個)の3種ポリペプチド鎖から構成されている。2量体で(Aα-Bβ-γ)2と表されるFbgは1分子中に58個のシステインを有し、全てが同一ポリペプチド鎖内あるいはポリペプチド鎖間でS-S結合している。Fbg分子の電子顕微鏡観察では、3つの領域とそれをつなぐcoiled-coil connectorsが認められ、中央N末端側をE 領域、両側C末端側をD領域と呼んでいる。
FbgはトロンビンによりAα16R(Arg)-17G(Gly)間が切断されフィブリノペプチドA (FPA)を放出する。FbgはFbnモノマーに転換し、自然に”A-knob”と”a-hole”が結合し二本鎖プロトフィブリルを形成する。さらに、トロンビンによりBβ14R-15G間が切断されフィブリノペプチドB(FPB)を放出すると、プロトフィブリル同士の重合が促進し、やがてFbn網(ゲル)が形成される。この時、活性化凝固第XIII因子が存在すると安定化Fbnとなる。
【ノックアウトマウスの表現形】
Aα鎖あるいはγ鎖ノックアウトマウスともに出産されるが、新生マウスの約30 %に出血が認められ、腹腔内出血で死亡することもある。また、メスは妊娠10日目頃子宮出血で死亡する。
【病態との関わり】
高Fbg血症は感染症、妊娠、悪性腫瘍、糖尿病、腎疾患、膠原病などで認められる、虚血性心疾患のリスクファクターのひとつである。一方、低Fbg血症は先天性(遺伝性)の原因と、後天性の原因に分けられる。後天性の原因としては肝疾患、血栓症、線溶亢進、薬物投与(L-asparaginase、蛇毒など)、抗Fbg抗体などがあり、50mg/dl以下になると日常生活での出血の危険がある。
【その他のポイント・お役立ち情報】
現在のFbg測定法は、トロンビンによるFbn転換を検出する活性測定法で自動凝固測定装置によって行われる。標準化が遅れているので、測定値、基準範囲には試薬間差、施設間差が認められる。なお、生後1~6か月の乳幼児の基準範囲は130~330mg/dlであり、年齢が上がるとともに成人の上・下限値に近づく。
図表
参考文献
1) 奥村伸生他:フィブリノゲン,検査と技術 36:707-715,2008.
2) Weisel JW, Litvinov RI: Mechanisms of fibrin polymerization and clinical implications. Blood 121: 1712
3) Medved L, Weisel JW; Fibrinogen and Factor XIII Subcommittee of Scientific Standardization Committee of International Society on Thrombosis and Haemostasis: Recommendations for nomenclature on fibrinogen and fibrin. J Thromb Haemost 7: 355