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  • PAI-1測定法

    2015/02/17 作成

    解説

    基準値<30 ng/ml


    測定法・測定原理

     血中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)は、ビトロネクチンと結合して組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)および ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)を阻害する活性型、活性のない潜在型およびtPA・PAI-1複合体として存在し、これらを合わせたものをトータルPAI-1と呼ぶ。トータルPAI-1の測定原理は、PAI-1に対するポリクローナル抗体を使用したラテックス凝集法である。


    異常値を示す病態とそのメカニズム

     PAI-1は急性期反応性タンパクであり、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン1(IL-1)などのサイトカインにより産生が増加するため、敗血症(敗血症による播種性血管内凝固症候群)、血管内皮細胞傷害、悪性腫瘍、手術、外傷で異常高値となる。また、PAI-1は血管内皮細胞や脂肪細胞で産生され、アンジオテンシンII、(プロ)インスリン、グルコース、トリグリセライド等の刺激で産生が増加するため、肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧でも高値となる。喫煙やストレスでも高値となる可能性がある。


    異常値に遭遇した際の対応

     過度の静脈駆血により血管内皮細胞が刺激された場合や遠心条件により血小板が血漿中に多く残存した場合等で異常高値となるため、これらの条件をチェックする。また、同一患者であっても午前中に高値となるため、日内変動に留意する。プラスミンの産生量は、血中のPAI-1量と反比例する。そのため、PAI-1高値の場合、線溶能が低下し、フィブリノゲンあるいはフィブリン分解産物の産生量が抑制され、見かけ上線溶系正常となる。


    その他のポイント・お役立ち情報

     血小板中にPAI-1の90%以上が含有されており、血小板の活性化により血漿中に放出される。抗血小板剤の種類に関係なく、その服用により血漿中PAI-1濃度が低下傾向を示す。また、アスピリンの増量もしくは併用開始により一過性に血漿中PAI-1濃度が高値となるが、その機序は不明である。男性の血漿中PAI-1濃度は、内頚動脈の肥厚とも関連する。加齢変動があり、男性40代、女性70代以降低下する。30代から70代まで性差があり、男性で高値となる。一般住民でのPAI-1値は、非正規分布を示し、高値側にシフトする。基準値幅が広く、基準値から正常・異常の判断が困難となる場合がある。その場合、個人レベルで経日変化を観察することが必要である。PAI-1遺伝子の発現調節領域の4G/5G遺伝子多型で4G/4Gの場合、高くなる傾向がある。PAI-1はアディポカイン(脂肪由来のサイトカイン)の一つであり、血漿PAI-1濃度は内臓脂肪量と相関する。血液中では、PAI-1がtPAより多く存在するため、tPA-PAI-1複合体の増加は、tPAの増加を意味する。

    参考文献

    1) 曽我部万紀他:医学のあゆみ 173.1995,997-998.
    2) 坂田洋一:Medicine 31:330-331,1994.
    3) Sakata T, Mannami T, Baba S, Kokubo Y, Kario K, Okamoto A, Kumeda K, Ohkura N, Katayama Y, Miyata T, Tomoike H, Kato H: Potential of free-form TFPI and PAI-1 to be useful markers of early atherosclerosis in a Japanese general population (the Suita Study): association with the intimal-medial thickness of carotid arteries. Atherosclerosis 176: 355360, 2004.
    4) Sakata T, Kario K: Increased plasma plasminogen activator inhibitor-1 levels caused by additional aspirin treatment. Thromb Haemost 95: 906907, 2006.

    関連用語