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血小板粘着能検査
解説
血管が破綻して出血がおこった場合、血小板は血管内皮下のコラーゲン(抗原線維)に粘着し、血小板が活性化することで血小板からアデノシン二リン酸(ADP)やセロトニンなどの生理活性物質が放出されるとともに、複数の血小板が凝集して血小板血栓(血小板凝集塊)を形成し、一次止血を完了する。さらに、血小板血栓を構成する活性化血小板の表面に表出したリン脂質を利用して血液凝固が促進され、最終的にフィブリン網によって包まれたフィブリン血栓(凝固血栓)が形成されて、二次止血が完了することになる。血小板のコラーゲンへの粘着はこれらの止血機構の最初におこる重要な反応であり、血小板粘着能検査は血小板の異物に対して粘着する能力を検査する検査法である。
血小板粘着能測定法の原理は、ガラスビーズを詰めたカラムに血小板を含む血液が通過する前後の血小板数を算定し、下式のような計算式でガラスビーズに粘着した血小板の割合を%で表示するものである。
血小板粘着能(%)=(ガラスビーズ通過前の血液の血小板数-通過後の血液の血小板数)/ガラスビーズ通過前の血液の血小板数
血液が通過する速度が速ければ粘着する血小板は少なくなる傾向があるため、できるだけ流速を一定にする必要がある。ただしこのガラスビーズ法は、血小板粘着に加えて粘着血小板への血小板凝集をも併せて測り込んでいるため、血小板停滞率(platelet retention rate)と呼ぶべきともいわれている。
従来、ガラスビーズ法による血小板粘着能測定は、いったん採血した血液をガラスビーズ管に通過させて、前後の血小板数を算定するHellem II法と、静脈を穿刺して吸引する血液を直接ガラスビーズ管に通過させた血液と、ガラスビーズの詰まっていないチューブを通過した血液とで血小板数を算定するSalzman変法とがあるが、現在では後者を応用した医学書院製機器を用いて一定の速度で吸引される血液を用いて測定されることが多い。また本来はガラスビーズへの粘着の測定ではなく、コラーゲンへの粘着の測定が目的であるため、現在ではコラーゲンをプラスチックビーズ表面に結合させたコラーゲンビーズカラムを用いる方法が採用されている。
コラーゲンに結合する血漿タンパクのフォン・ヴィレブランド因子(VWF)とそれに対する血小板側の受容体である血小板膜糖タンパク質Ib(GPIb)のどちらかに異常があれば粘着能は低下する。したがって血小板粘着能測定の臨床的意義としては、VWFの異常でおこるフォン・ヴィレブランド病、GPIbが欠損しているBernard-Soulier症候群で低下がみられる。また現在の測定法では血小板凝集能の影響も受けるため、先天性の血小板凝集異常である血小板無力症でも低下を示す。したがって、血小板粘着能の低下がみられた場合には、血小板凝集能検査(透過度法)も必要である。