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エンドスタチン endostatin
解説
1.エンドスタチン発見の経緯
エンドスタチンは、アンジオスタチンの発見と同様のストラテジーで、マウス血管内皮腫細胞 (EOMA細胞)の培養上清から単離・同定された分子量20kDaの血管新生抑制活性のあるタンパクであり、その実体はXVIII型コラーゲンのC末端側にコードされているNC (noncollagenous)-1ドメインの断片である(1)。
2.エンドスタチンの由来
XVIII型コラーゲンは、全身の基底膜に局在する細胞外基質タンパクであり、選択的スプライシングによって3つの異なるサイズが存在する。N末端およびC末端のNCドメイン、その間に10個のヘリカルドメインと、それぞれを隔てる11個の非ヘリカルドメインが存在する。エンドスタチンは、基底膜改変の過程でXVIII型コラーゲンが種々のMMP群によって消化され、NC-1ドメインが切り出されることによる(図) (2)。
ヒトXVIII型コラーゲン遺伝子は21番染色体にコードされている。ダウン症候群は21番染色体のトリソミーであるが、ダウン症候群患者ではエンドスタチンの血中濃度が健常者よりも1.5倍高く、そのことがダウン症候群における低い発癌頻度の一因ではないかと考えられている(3)。
3.エンドスタチンの作用発現
エンドスタチンが血管新生抑制作用を発揮する機序との関連で、エンドスタチンと結合するタンパクが複数同定されている。
グリピカンはGPI (Glycosyl phosphatidylinositol)アンカー型の細胞膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、エンドスタチンの低親和性受容体として、未だ同定されていない高親和性受容体と協調して、血管新生抑制の作用発現に機能すると考えられている(4)。
さらにエンドスタチンは血管内皮細胞のα5サブユニットあるいはαvサブユニットを有するインテグリン(α5β1, αvβ3, αvβ5)の機能を阻害して血管新生抑制作用を発揮することが報告されている(5)。
図表
参考文献
1) O’Reilly MS, Boehm T, Shing Y, Fukai N, Vasios G, Lane WS, Flynn E, Birkhead JR, Olsen BR, Folkman J: Endostatin: an endogenous inhibitor of angiogenesis and tumor growth. Cell 88: 277
2) Heljasvaara R, Nyberg P, Luostarinen J, Parikka M, Heikkilä P, Rehn M, Sorsa T, Salo T, Pihlajaniemi T: Generation of biologically active endostatin fragments from human collagen XVIII by distinct matrix metalloproteases. Exp Cell Res 307: 292
3) Zorick TS, et al: Eur J Hum 9: 811-814, 2001.
4) Wickström SA, Alitalo K, Keski-Oja J: Endostatin signaling and regulation of endothelial cell-matrix interactions. Adv Cancer Res 94: 197
5) Ribatti D: Leuk Res 33: 638-644, 2009.