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    2015/02/17 作成

    解説

     マイクロパーティクル(MP)はプロコアグラント活性を有していることから、臨床的には凝固促進物質として理解されている。また最近は、細胞の接着分子の発現を誘導したり、細胞間の様々な情報伝達システムの中心的な役割を果たすなどの、血管内におけるホメオスターシス維持において重要な物質であるという点で注目されている。

    活性化血小板とMP
     血小板に種々の刺激が加わると、血小板は活性型血小板とよばれる状態に移行する。活性型血小板の表面には、Pセレクチンなどの活性化依存性の分子が多数発現している。活性型血小板はまた、凝固を促進させる物質であるMPを放出し、この働きによって凝固カスケードが開始して、いわゆるフィブリンネットワークが形成される。MPは、生成の起源となった細胞の構成成分である膜抗原を多数含有しており、フローサイトメトリーなどを用いて、これらを特異的に検出することができる。

    リン脂質とMP
     通常、リン脂質は細胞表面ではほとんどみられず、細胞表面を形成する膜糖タンパク質の内側部分に存在している。プロコアグラント活性の発現に最も重要なリン脂質は、ホスファチジルセリン(PS)であり、活性化された凝固因子の結合ならびに反応を促進する働きを持っている。活性型血小板では、flip-flop 現象と呼ばれる膜の反転化現象により血小板表面にPSが発現し、これが触媒増強作用を示すことによって凝固反応が促進されていく。その結果、活性型血小板表面のプロコアグラント活性は増加し、同時に血小板からより強いプロコアグラント活性をもったMPが放出される。

    血小板由来MPの機能
     血小板由来MP(PDMP)は、Pセレクチンと同様に多くの血栓性疾患で血中濃度の上昇が確認されている。PDMP上には多数の機能的分子が存在し、プロコアグラント活性以外の機能にも寄与している。例えば、PDMP は白血球と血管内皮細胞の接着分子の発現を増強させ、動脈硬化発症のメカニズムにも関与する。動脈硬化病変では、白血球や内皮細胞の接着分子の発現増加がみられるが、その要因に大きく関わっているのはサイトカインあるいはケモカインであり、PDMPはこれらの反応を促進させる方向に働いている。

    単球由来MPと内皮細胞由来MPの意義
     単球由来のMP(MDMP)は、2型糖尿病などの単球の活性化をきたすような様々な疾患において血中濃度の増加が観察されている。また急性冠症候群においては、酸化LDL依存性のMDMPの生成も観察されており、急性期の冠動脈血栓の原因としてMDMPが大きな役割を果たしている可能性が考えられる。
     生体内で血栓を制御している最も重要な機構は、血管内皮細胞である。内皮細胞もまた単球同様、組織因子を豊富に含んだMP (EDMP)を生成する。EDMPは、腎症を合併した2型糖尿病や腎不全患者では血中に特に多量に検出され、また酸化LDLの存在下においても明らかに生成が増強される。EDMPはまた、活性化プロテインC(APC)およびその内皮細胞上のレセプターである血管内皮細胞プロテインC受容体(endothelial protein C receptor;EPCR)の両者を含んでおり、抗凝固あるいは内皮保護の役割を果たしている。