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Budd-Chiari 症候群(JAK2 V617F含む) Budd-Chiari syndrome (including JAK2 V617F)
解説
1) 病態・病因
Budd-Chiari症候群(BCS)とは肝静脈主幹/肝部下大静脈の閉塞や狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。我が国では肝部下大静脈の閉塞、特に膜様閉塞による発症例が多く、本症の発生は先天的血管形成異常説が考えられてきたが、中高年以降での発症も多く、膜様閉塞や肝静脈起始部狭窄・閉塞が血栓とその器質化でも説明可能なため後天的血栓説も考えられている。一方、欧米では基礎疾患をもつことが多く、血液疾患(真性多血症、発作性夜間血色素尿症、骨髄線維症)、経口避妊薬服用、妊娠、腹腔内感染、血管炎(ベーチェット病、SLE)、血液凝固制御異常(アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症)など血栓傾向を示す疾患に多い。
2) 疫学
厚労省特定疾患門脈血行異常症調査研究班の全国調査では、有病率は人口100万人当たり2.4人、年間推定発病率は人口100万人当たり0.34人と極めて少ない。診療を受けている全国の患者数は年間300人前後で、男女比は1.6:1とやや男性に多く、年齢は50歳代が最も多いが、平均発症年齢は男性36歳、女性47歳と男性で低い傾向がみられる。肝部下大静脈の膜様閉塞や肝静脈起始部の限局した狭窄・閉塞例は、アジアやアフリカで多く欧米には少ない。
厚労省特定疾患門脈血行異常症調査研究班の全国調査では、有病率は人口100万人当たり2.4人、年間推定発病率は人口100万人当たり0.34人と極めて少ない。診療を受けている全国の患者数は年間300人前後で、男女比は1.6:1とやや男性に多く、年齢は50歳代が最も多いが、平均発症年齢は男性36歳、女性47歳と男性で低い傾向がみられる。肝部下大静脈の膜様閉塞や肝静脈起始部の限局した狭窄・閉塞例は、アジアやアフリカで多く欧米には少ない。
3) 検査と診断
主に画像検査所見と病理検査所見を参考に確定診断を得る。
血液検査では一つ以上の血球成分の減少がみられ、肝機能は正常~高度異常と重症になるにしたがい障害度が変化する。内視鏡検査ではしばしば上部消化管に静脈瘤を認め、画像検査(超音波、CT、MRI、下大静脈・肝静脈造影)では肝静脈主幹/肝部下大静脈の閉塞や狭窄、脾腫(特に尾状葉)、肝硬変に至れば肝萎縮を認める。病理検査では肉眼的に急性期うっ血性肝腫大、慢性うっ血に伴う肝線維化、さらにうっ血性肝硬変への進行がみられ、組織学的には肝小葉中心帯類洞のうっ血拡張、中心帯壊死、肝小葉の逆転像や中心帯領域の線維化、さらに進行すると肝硬変所見(架橋性線維化、線維性隔壁形成)を呈する。
4) 治療の実際
肝静脈主幹/肝部下大静脈の閉塞・狭窄に対し、臨床症状や閉塞・狭窄の病態に対応したカテーテル開通術や拡張術、ステント留置あるいは閉塞・狭窄の直接解除術、もしくは閉塞・狭窄部上下の大静脈のシャント手術などを選択する。急性症例で肝静脈末梢まで血栓閉塞している際には肝切離面-右心房吻合術も選択肢となる。肝不全例に対しては肝移植術を考慮する。
5) その他のポイント・お役立ち情報
真性多血症の原因遺伝子異常・JAK2 V617F変異が欧米人BCS症例の約半数に認められると報告されたが、厚労省調査研究班の日本人BCS症例24例では1例にこの変異を検出したのみで、BCS発症要因は日本人と欧米人で大きく異なることが判明している。
参考文献
1) バッド・キアリ症候群,難病医学研究財団/難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp/entry/317