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  • 創傷治癒 wound healing

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     創傷治癒は、止血→炎症→細胞増殖→リモデリングの機序が時間経過とともにプロセスする一連の組織反応系である。それぞれの反応系が正常に活性化され収束して次のプロセスにしっかりと移行することが大切である。例えば、組織傷害による炎症反応の開始から収束に至る過程は厳密に制御され、近年micro-RNAによる制御の機序も注目されている。

    【機序】
     止血反応系においては凝固反応の最終段階において活性化凝固第XIII因子はフィブリン、α2-プラスミンインヒビター (α2PI)そして創傷治癒に重要な役割を果たすフィブロネクチンなどのタンパク質を共有結合で架橋する。また、血小板はvascular endothelial growth factor-A、platelet derived growth factor(PDGF)、transforming growth factor-β(TGF-β)、epidermal growth factor等の増殖因子を豊富に含み、組織傷害部位の止血血栓は血管新生、細胞増殖、細胞遊走を促すバイオアクティブリザーバーの役割を果たす。炎症期には好中球による外来微生物の貪食に続く単球、マクロファージによる免疫応答が含まれ、マクロファージもまたPDGF、TGF-β、TGF-α、fibroblast growth factorを分泌して線維芽細胞の増殖を促す(増殖期への移行)。線維芽細胞は細胞外マトリックスを構成するコラーゲン線維を産生・分泌する。増殖期においては血管新生線維芽細胞の増殖(肉芽組織の形成)、筋線維芽細胞への分化、ケラチノサイトの増殖抑制と遊走、再上皮化が起こる。リモデリングにおいてはmatrix metalloproteinases/ tissue inhibitor of metalloproteinasesによる細胞外マトリックスの分解とlysyl oxidasesによるコラーゲンの架橋反応が含まれる。また、線溶系は血栓の溶解に加えて細胞の遊走、浸潤、増殖、分化などの細胞機能の制御、細胞外基質の分解、各種プロテアーゼの活性化を制御して組織の修復、リモデリングのプロセスに関与する(組織線溶・細胞線溶)。

    【治療への応用】
     凝固第XIII因子は「凝固第XIII因子低下に伴う縫合不全及び瘻孔」に対して、商品名「フィブロガミンP」として臨床応用されている。

    引用文献

    1) 豊國伸哉・高橋雅英監訳,ロビンス 基礎病理学 原著9版,丸善出版.