- 大分類
-
- 凝固
- 小分類
-
- 分子
プロトロンビン・トロンビン prothrombin / thrombin
解説
【分子量、半減期、血中濃度】
分子量:ヒトプロトロンビン(以下HPと略)、72,500Da; アルファートロンビン(以下HTと略)、A鎖(6,000Da)とB鎖(31000Da)からなるヘテロ2本鎖(37,000Da)。半減期:P 2.81±0.51日、血中濃度150 mg/L, T:HPの活性化により生成されたHTは基質であるフィブリノゲンなどの多彩な基質に作用する。過剰のトロンビンは瞬時にアンチトロンビン(AT)などと結合し(TATの形成)消滅する。血中TAT値は血液の凝固の動向をみる良い指標である。
【構造と機能】
Glaドメイン(生体膜結合ドメイン)、2個のクリングルドメイン、そしてセリンプロテアーゼドメインからなる。ヒトProthrombinaseによりHTが形成されると、多数の基質(フィブリノゲン、凝固第V因子、凝固第VIII因子、凝固第XI因子、凝固第XIII因子)及び血小板、白血球、血管内皮細胞、平滑筋細胞などに作用する。その結果、止血にとどまらず細胞修復や炎症に対して重要な役割を果たす。
【ノックアウトマウスの表現型】
ノックアウトマウスの胎性致死率は50-90%である。プロトロンビンマウス胚の約半数は胎齢10日前後の間に死亡する。その原因は血管形成不全によるもので、外因系凝固系によるトロンビン形成が不十分な為、トロンビンレセプター(PAR-1など)を介してのシグナルが不十分だからと推定されている。
【病態との関わり】
プロトロンビン時間(PT-INR)は、手術前の必須の検査で、いわゆる組織因子を引き金とする外因凝固因子の異常を見る検査である。またPT-INRはワルファリン治療のモニタリングになくてならない検査である。抗リン脂質抗体症候群(APS)におけるホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の研究に注目したい。
参考文献
1) 山崎泰男,森田隆司:プロトロンビンの基礎と臨床,一瀬白帝編集,図説 血栓・止血・血管学 血栓症制圧のために.2005,295-304.
2) 水口純:血液凝固関連因子の遺伝子改変動物,同上.2005,810-820.
3) 手嶋かおり,中垣智弘:プロトロンビンの欠損マウス,日本血栓止血誌 9:471-474,1998.(日本血栓止血学会ホームページ,ノックアウトマウスシリーズ. http://www.jsth.org/wordpress/publications/index4.html#01から閲覧可能)