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巨核球分化・血小板産生 megakaryocyte maturation and platelet production
解説
巨核球分化・血小板産生機構は、巨核球産生と血小板産生の2つの過程に分けられる。
(1)巨核球産生(造血)
骨髄中の造血幹細胞は、巨核球―赤血球系前駆細胞、巨核球前駆細胞、成熟巨核球へと分化する。その分化を制御する主体のサイトカインは、トロンボポエチン(TPO)である。TPOはそのレセプターのMPLを介してJAK/STAT、PI3キナーゼの細胞内シグナルの活性化を介して巨核球の分化・増殖を制御している。巨核球系細胞の分化・成熟には転写因子としてNF-E2、Fli-1、GATA1、c-Myb、RUNX-1、などが関与している。またmicroRNAではmir125b, 145, 146a, 150などが関与する報告がある。最終的に巨核球はendomitosis(細胞質分裂を伴わない核を多倍体化させる)を経て、巨大な核と細胞質を持つ成熟巨核球となる。骨髄ニッチ近傍に多く存在していた未熟な巨核球系細胞は、成熟を遂げるとSDF-1を介して骨髄静脈洞近傍へ移動する。骨髄静脈洞近傍に位置する成熟巨核球は、TGF-βや血小板第4因子(PF4)分泌を介して、造血幹細胞に対するニッチ機能をもつ。
(2)血小板産生機構
骨髄静脈洞近傍へ移動した成熟巨核球は、静脈洞の内皮細胞を貫通する細胞突起を形成する。この突起はproplateletと呼ばれ血管内を数百マイクロメートル以上伸長できる。
TPOは当初、proplateletの形成も直接促進すると考えられていた。しかし、巨核球造血の制御が主体で、proplatelet形成には関与しないか、抑制的に働くと考えられるようになってきている。スフィンゴシン1-リン酸は巨核球に血管内の位置を認識させproplateletの伸長方向を誘導している。Proplateletの形成過程では、その内部では微小管配列の再構成が重要である。微小管線維同士がキネシンを介したslidingにより、proplateletを伸長させる。またその外部環境としては血流による影響が予想されている。伸長したproplateletの遠位部分は血小板によく似た内部構造を示しており、巨核球より分離し骨髄から流れ去る。
分離した細胞質の大きさは、血小板サイズの長さのものから数百マイクロメートルまで様々であり一様ではない。これらは骨髄静脈洞から大静脈を経て肺循環を経て大循環へ至る。血小板より大きな細胞(血小板前駆体)は、培養条件下で分裂し血小板となる能力があることは報告されている。肺の毛細血管内に巨核球やその細胞質が存在するという報告は多く、血小板前駆体が分裂を生じる場として有力な候補である。その分裂過程が流血中で行われていることに疑いはないが、血小板前駆体がどこでどのように血小板へとかわるのかについては未だ不明な点が多く残されている。
参考文献
1) Joseph E, Italiano JR, et al: Megakaryocyte Development and Pplatelet Formation. PLATELETS. 3rd ed. Oxford, Elsevier, 2013, 117-144.
2) Kowata S, Isogai S, Murai K, Ito S, Tohyama K, Ema M, Hitomi J, Ishida Y: Platelet demand modulates the type of intravascular protrusion of megakaryocytes in bone marrow. Thromb Haemost 112(4): 743-56, 2014.