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    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     NF-E2はNF-E2 p45と小Maf因子のヘテロ2量体からなる転写因子である。巨核球の分化と成熟に必須の因子であり、特に、成熟した巨核球から血小板が産生される過程である胞体突起形成において重要な役割を担っている。NF-E2 p45子欠損マウスも、小Maf因子の遺伝子欠損マウスでも、重篤な血小板減少が認められる。

    【構造と機能】
     NF-E2を構成するNF-E2 p45と小Maf因子は、いずれも塩基性領域―ロイシンジッパー構造(bZip構造)を有しており、前者はCNC転写因子群に、後者はMaf転写因子群に属する。これらは、ロイシンジッパーの部分で2量体を形成し、塩基性領域でDNAに結合する。NF-E2が認識するDNAコンセンサス配列は、TGCTGA G/C TCA C/Tであり、NF-E2結合配列と呼ばれる。NF-E2 p45はCNC転写因子群の中で最初に発見された因子であり、その関連因子には、Nrf1、Nrf2、Nrf3がある。小Maf因子には、機能的にほぼ等価であるMafG、MafK、MafFが同定されているが、血小板形成に最も貢献が大きいのはMafGである。
     NF-E2は、発見当初は赤血球分化に重要であることが予想されていたが、遺伝子欠損マウスの解析から巨核球分化と成熟、血小板産生において重要な役割を担っていることが明らかになった。巨核球におけるNF-E2の標的遺伝子としては、胞体突起形成に重要であるものとしてβ1チュブリン、血小板機能に関連するものとして、トロンボキサン合成酵素、Pセレクチン、MYL9などがある。

    【ノックアウトマウスの表現形】
     NF-E2 p45遺伝子ノックアウトマウスは、重篤な出血のため出生時にほぼ9割が死亡する。生き延びた1割程度のマウスは血小板減少が顕著であるものの、通常に成長するが、その骨髄は線維化が顕著である。NF-E2 p45欠損マウスの巨核球はプロイディーが高く大型のものが多く、胞体突起形成はほとんど認められない。

     MafG遺伝子ノックアウトマウスは野生型マウスの6割程度の血小板数を示し、MafG–/–::MafK+/–マウスでは野生型マウスの3割程度である。MafG–/–::MafK–/–マウスの血小板数は野生型マウスの1割未満で、NF-E2 p45欠損マウスとほぼ同程度の血小板数を示す。これらマウスの巨核球は、NF-E2 p45欠損マウスの巨核球とほぼ同じ表現型を示し、胞体突起形成が起こらない。

    参考文献

    1) Shivdasani RA, Rosenblatt MF, Zucker-Franklin D, Jackson CW, Hunt P, Saris CJ, Orkin SH: Transcription factor NF-E2 is required for platelet formation independent of the actions of thrombopoietin/MGDF in megakaryocyte development. Cell 81: 695704, 1995.

    2) Onodera et al: Perinatal synthetic lethality and hematopoietic defects in compound mafG::mafK mutant mice. EMBO J 19: 13351345, 2000.

    3) Fujita et al: NF-E2 p45 is important for establishing normal function of platelets. Mol Cell Biol 33: 26592670, 2013.