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  • GATA1

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     413個のアミノ酸から構成される分子量42,700の転写因子で、A/TGATAA/Gの塩基配列を認識してDNAに結合し、赤血球や巨核球の分化に関わる遺伝子の発現を制御する。

    【構造と機能】
     アミノ末端(N)側とカルボキシ末端(C)側に二つの転写活性化領域と、DNA結合やタンパク間相互作用に関わる二つの亜鉛フィンガー(N-フィンガーとC-フィンガー)領域を有する(図)。巨核球分化・血小板産生過程において、少なくとも2段階で機能し、胎児肝臓での未熟な巨核球の分化誘導と増殖抑制にはN側転写活性化領域が、巨核球の終末分化と胞体突起形成には共役分子FOG1との相互作用を介したN-フィンガー領域が関わっている(図)。

    【遺伝子改変マウスを用いた機能解析】

     1)GATA1遺伝子はX染色体上にあるため、GATA1遺伝子破壊の影響は雄と雌で異なる。雄マウスは卵黄嚢での赤血球造血不全で致死となる。雌マウスでは、X染色体の不活化により、異なる2種類の血球が存在する。正常なX染色体が活性化している細胞からは赤血球や血小板が正常に産生されるが、正常なX染色体が不活化されている細胞では赤血球も血小板も産生されないため、軽度の貧血と血小板減少を呈する。

     2)後天的なGATA1遺伝子破壊により赤血球前駆細胞が消失して未熟な巨核球が異常増殖する。

     3)トランスジェニック相補レスキュー法(ノックアウトヘミ接合雄マウスにトランスジーンによりGATA1変異体を発現させ、変異により損なわれた機能を個体内で解析する手法)を用いた解析で、種々のヒト疾患モデルマウスが樹立されている。

    【病態との関わり】
     1)N-フィンガー内の1アミノ酸置換により、FOG1またはDNAとの結合が減弱している家系で、X染色体連鎖性の血小板減少症や灰色血小板症候群が報告されている。

     2)ダウン症に好発する一過性骨髄増殖症や巨核芽球性白血病の発症に、GATA1のN側転写活性化領域の欠失変異が関与している。

     3)N側転写活性化領域を欠失した家系では、血小板凝集能がやや低下しているが、血小板数異常はない。

    図表

    • GATA1の構造と機能

    参考文献

    1) GATA1転写因子の機能異常と白血病,臨床血液 52:695-702,2011.